【2】副業収入300万円以下は雑所得に。税負担が増えるのはこのパターン!
トウシル / 2022年9月9日 6時0分
【2】副業収入300万円以下は雑所得に。税負担が増えるのはこのパターン!
<編集注>国税庁は10月7日、本記事で取り上げている『所得税基本通達』の改正案を修正すると発表しました。 新たな通達では、帳簿書類の記帳と保存があれば所得区分を『事業所得』に、ない場合は『雑所得』とします。原則として「本業」か「副業」かは区別しません。
本記事は10月6日時点の内容であり、最新情報と一部異なります。詳細は国税庁発表をご確認ください。
最新記事はこちら:「副業300万円問題」が決着!当初案からどのように変わったか?
改正の影響を4パターンでチェック!
前回、年間300万円以下の副業収入は事業所得とは認められず、雑所得となる改正が行われる見通しであることを本コラムでお伝えしました。
今回はその続きとして、この改正によりどのような影響が生じるのか、四つのパターン別にみていきたいと思います。
なお、ここで「本業」とは、会社勤めによる給与所得を指します。また、計算の便宜上、「本業の所得」とは、給与所得から社会保険料控除、基礎控除などを差し引いた課税対象の金額を指すものとします。
また、副業の所得は65万円の青色申告特別控除の適用前のものとして計算しています。
■四つのパターン
(1) 本業の所得500万円/副業の所得マイナス100万円
(2) 本業の所得1,000万円/副業の所得マイナス100万円
(3) 本業の所得500万円/副業の所得プラス100万円
(4) 本業の所得1,000万円/副業の所得プラス100万円
パターン(1)本業の所得500万円/副業の所得マイナス100万円
パターン(1)(2)は、副業の所得がマイナスの場合。まずはパターン(1)を、現状と改正が行われた場合とで見比べていきます。
現状:副業のマイナス100万円を本業の所得と損益通算できますので、所得は400万円となります。
その結果、所得税と住民税を合わせた税額はおよそ78万円となります。
改正が行われた場合:副業のマイナス100万円を本業の所得と損益通算できなくなりますので、所得は本業の所得500万円です。
その結果、税額はおよそ108万5,000円となり、現状より30万円ほど税額が増えることになります。
パターン(2)本業の所得1,000万円/副業の所得マイナス100万円
現状:副業のマイナス100万円を本業の所得と損益通算できますので、所得は900万円となります。
その結果、所得税と住民税を合わせた税額はおよそ236万4,000円となります。
改正が行われた場合:副業のマイナス100万円を本業の所得と損益通算できなくなりますので、所得は本業の所得1,000万円です。
その結果、税額はおよそ280万1,000円となり、現状より44万円ほど税額が増えることになります。
(1)より(2)の方が影響額が大きいことからも分かる通り、所得の金額が大きいほど、改正の影響も大きくなります。
パターン(3)本業の所得500万円/副業の所得プラス100万円
パターン(3)(4)は、副業の所得がプラスの場合です。この場合は青色申告特別控除が使えるかどうかが大きく影響します。
まずパターン(3)についてです。
現状:副業の所得がプラスの場合、事業所得かつ65万円の青色申告特別控除が使えますので、所得合計は500万円+100万円-65万円=535万円となります。この時の税額はおよそ119万円1,000円です。
改正が行われた場合:65万円の青色申告特別控除が使えなくなるので、所得合計は500万円+100万円=600万円となります。税額はおよそ138万9,000円です。
これらにより、両者の差である20万円ほど、現状より税額が増えることになります。
パターン(4)本業の所得1,000万円/副業の所得プラス100万円
最後にパターン(4)です。
現状:副業の所得がプラスの場合、事業所得かつ65万円の青色申告特別控除が使えますので、所得合計は1,000万円+100万円-65万円=1,035万円となります。この時の税額はおよそ295万円4,000円です。
改正が行われた場合:65万円の青色申告特別控除が使えなくなるので、所得合計は1,000万円+100万円=1,100万円となります。税額はおよそ323万8,000円です。
両者の差は約28万円となります。(1)(2)と同様、所得の額が大きいほど、影響額も大きくなっていきます。
改正に備えた対策は?
では、この改正に備えた対策として、どのようなものが考えられるでしょうか。
頑張って年間収入を300万円超に持っていく
年間収入が300万円超であれば、形式基準で事業所得と認められるわけですから、頑張って年間収入を300万円超にまで引き上げるのは一つの対策です。
この改正を機に独立して、フリーランスなどの仕事に専念し、300万円を大きく超える年間収入を目指すのもありでしょう。
また、将来独立を考えている人が副業をスタートさせて間もない時期など、年間収入300万円を超えることができない場合は、事業所得と認められるケースもあるようです。この点についてはまだはっきりしないので、税務署などに相談することをお勧めします。
法人を設立してそこで副業する
副業は、個人事業主として行わなければいけないわけではありません。副業のために法人を設立し、法人を用いて副業することもできます。
法人は、まさに事業を行うために存在するものですから、法人で副業をすれば、収入が年間300万円以下であっても事業となります。
また、法人は青色申告により赤字(欠損金)を最大9年繰り越すこともできます。個人の雑所得のように、赤字が切り捨てとされることもありません。
今回取り上げたテーマについては、正式にどのような形で改正となるかまだ決まっていません。課税当局がこれから出すアナウンスを待ちつつ、具体的な対策を考えていくようにしましょう。
(足立 武志)
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