歴史をみればわかるが、バブル相場の終わりは必ずインフレである
トウシル / 2022年10月27日 16時32分
歴史をみればわかるが、バブル相場の終わりは必ずインフレである
日銀が過去最大の円買い介入を実施
日本銀行(財務省)が断続的な円買い介入に動いている。日銀が10月21日に約5兆3,800億~5兆4,800億円の円買い介入を行ったとの推計が出ているが、円買い介入としては過去最大規模となる。
昨日10月24日の朝の市場ではドル/円が149円台後半から、一時145円56銭まで急落し、日銀は連日の円買い介入を行ったようだ。
ドル/円(15分足)と日銀介入
神田真人財務官は、「24時間365日、いつでも、どこでも、市場を監視し、必要な対応を行う体制を整えています」と、今週月曜日に記者団に語った。
日銀の介入は、9月の最初の介入以来うまくいっていない。ドル/円相場が円高になる条件は、
1.日本が金利を上げる
2.米国が金利を下げる
3.株が暴落する
といういずれかの条件が必要となる。
10月24日のゼロヘッジの記事、『日銀は500億ドルを無駄に使ったのか』によると、先週金曜日の介入は9月の介入を上回る規模になっている。
9月の円買い介入を上回るボリュームとなっている
しかし、市場関係者は一様に日銀の介入効果を疑問視していて、「日本が金利を上げない限り翌日には介入効果が消え去る」と述べている。
9月22日に行われた介入(上昇:円高・下落:円安)
10月13日の介入(上昇:円高・下落:円安)
10月18日の介入(上昇:円高・下落:円安)
ゼロヘッジの記事は、「狂気の定義は、同じことをもう一度試みて、別の結果を期待することだとアインシュタインは言ったのではありませんか?日本の政策立案者は、多くの市場参加者が彼らの極端な行動について長い間信じていたこと(単独介入は効果がない)を確認したようです」と、結んでいる。
何度も申し上げているように、過去の介入をみると、日銀の円買い介入は円の下落を止めることができなかっただけでなく、介入後はさらに大きな下落に見舞われている。日銀の単独介入の答えはもう出ているのである。
日銀の円買い介入とドル/円相場(1997~1999年)
ラジオやTwitterなどでご案内の通り、FRB(米連邦準備制度理事会)のインフレファイトの腰砕け観測からドルの上値も重くなってきている。
ミスター米国債(時の権力者の意向を受けてコロコロ発言を変えることで有名)と呼ばれ、米国債市場に影響力を持つセントルイス連邦準備銀行のブラード総裁は、40年ぶりの高インフレ下で政策引き締めを継続する必要性を強調しながらも、来年には慎重な姿勢を強めることを示唆した。
また、影のFRB議長と呼ばれるブレイナードFRB副議長は、「高インフレ抑制に向けて積極的な利上げを続ける上で慎重な姿勢で臨むことが重要だ」と指摘した。
こうした当局者の発言に加えて、ウォールストリートジャーナルが10月21日に「米連邦準備理事会(FRB)が12月の会合でこれまでよりも小幅な利上げを巡り検討する公算が大きい」と報道したことから、市場はまたしてもパウエル・ピボット(パウエルの転換)に期待している。
ドルインデックスのチャートをみると、現状は売りシグナルが点灯しているものの調整相場である。ADXと標準偏差ボラティリティの動きを確認しながら、次のトレンドの発生を確認したい。
ドルインデックス(日足)
主要通貨の週足の売買シグナルはまだドル買いのままだが、この先、米国の「利上げ打ち止め」や「利下げ」という事態(金融緩和の再開)になれば、ドルが大きく売られるであろうことは想定しておきたい。
ドル/円(週足)
ユーロ/ドル(週足)
ポンド/ドル(週足)
豪ドル/ドル(週足)
米国の経済政策とドル相場
弱気相場が終わるまでにはまだ長い道のりがある
大きな下げ相場では大きなリバウンドもある! したがって、安易な売りポジションの構築には注意が必要である。だが、スーパーバブルの崩壊相場が終わるまでにはまだ長い道のりがある。
S&P500とパウエル・ピボット期待
弱気相場には三つの段階がある
政府と中央銀行がカネをバラまいていれば、株価は永遠に上がっていくのだろうか? それは30年間MMT(現代貨幣理論)政策を行ってきた日本の株価が証明している。 スーパーバブルの崩壊で政府が市場に大規模介入すると、長期にわたる日柄調整相場になるのである。
日経平均と一般政府負債
著名投資家のドラッケンミラーは、「インフレが猛威を振るい、中央銀行が利上げ、脱グローバリゼーションが定着し、ウクライナでの戦争が長引く中、世界的な景気後退の可能性は過去数十年で最も高いと考えている」という。
「米国株市場はここから10年間、1966年から1982年の期間のように横ばいになる可能性が高いと思われる。1982年に始まった金融資産の強気相場を振り返ってみると、そのブームを生み出した〈すべての要因〉は止まっただけでなく、逆転したのである」
(スタンレー・ドラッケンミラー)
NYダウ(月足)と1966年から1982年の横ばい相場
歴史をみればわかるが、バブル相場の終わりは必ず「インフレ」である。
ハイエクの『隷従への道―全体主義と自由』は、政府がインフレによって大衆を貧困化させた後に起こりうる政治的展開について記したものである。
有効な経済理論への細心の注意に加えて、ミーゼスの論文の権威は、オーストリアのハイパーインフレの経済と政治を直接目撃した戦後の経験から来ており、ドイツのそれに続いている。それ以来、私たちは教訓を忘れてしまった。
「今、私たちは景気後退期にあると思うが、これは私が予想していたことだった。経済が弱くなるにつれてインフレが強くなった。この不況はまだ始まったばかりだと思う。インフレに苦しむ家庭は政府に苦しめられている。インフレは税金のようなもので、政府の赤字財政を支えるものだ」
(ピーター・シフ)
「先進国におけるすべての2シグマ株式バブルは、成長トレンドに平均回帰した。1929年と2000年の米国および1989年の日本では3シグマ以上のスーパーバブルになった。2006年には米国で、1989年には日本でも住宅にスーパーバブルが発生した。これらの5つのスーパーバブルはすべて、平均よりもはるかに大きくて長い痛みを伴うトレンドまでずっと修正を続けた。今日、米国は過去100年間で4番目のスーパーバブルの中にいる」
(ジェレミー・グランサム)
実質S&P500と実質利益の累積変化量
このエブリシングバブルの崩壊は、最終的には「金融抑圧」(高インフレ+人為的低金利で、政府債務の棒引き・実質的な借金返済を図ること)では済まず、将来的に戦争(経済学的には国家最大の公共事業)になる可能性がある。
アメリカ帝国のビッグサイクル
ルービニは、「投資家は、インフレ、政治・地政学的リスク、環境破壊をヘッジする資産、すなわち短期国債やインフレ連動債、金などの貴金属、環境破壊に強い不動産などを見つける必要がある」と、述べている。
10月26日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
10月26日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土居雅紹さん(楽天証券 株式・デリバティブ事業部長)をゲストにお招きして、「株式市場とハロウィンルール」・「11月相場の詳細なシーズナルパターン」・「またしても、パウエル・ピボット期待相場」・「個別銘柄のテクニカル分析(日足・週足)」・「土居さんの注目銘柄」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
10月26日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
(石原 順)
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