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固定金利と変動金利、どっちがトク?<7-2>夫婦、住宅ローンを学ぶ

トウシル / 2025年1月10日 16時0分

固定金利と変動金利、どっちがトク?<7-2>夫婦、住宅ローンを学ぶ

固定金利と変動金利、どっちがトク?<7-2>夫婦、住宅ローンを学ぶ

これまでのあらすじ

 信一郎と理香は小学生と0歳児の子どもを持つ夫婦。第二子の長女誕生と、長男の中学進学問題で、教育費の負担が気になり始め、毎週金曜夜にマネー会議をすることになった二人。一家の条件に合う物件を見つけるが、住宅ローン返済への不安が募るばかり…。

藤元家の相関図

 夫婦の条件が一致し、これから抽選が始まるマンションの価格は7,000万円。夫婦の貯金と、信一郎の実家の援助を入れて、頭金700万円と、住宅購入にかかる諸費用約230万円を用意する前提だとすると、住宅ローンは6,000万円の借り入れとなる。

「では実際に住宅ローンを絞りこんでみましょう」

 FP氏はパソコン画面で、住宅ローン比較サイトを開いた。

 新規借り入れの人気ランキングなども掲載されていて、さまざまなヒントがもらえそうだ、とワクワクと覗き込んだ二人は、その時点で軽く固まった。一番最初に選ばなければならないのが、変動金利・固定金利・フラット35の「金利タイプ」なのだ。

「変動金利と固定金利とフラット35、どれがいちばんトクなんですか?」

 理香は考えるのを放棄したらしく、率直な質問をFP氏に丸投げする。FP氏は少し考えてこういった。

「金利の説明の前に、住宅ローンにはどんな種類があるのか、ざっくりとご説明しますね」

 FPの言葉に、二人はうなずき、さっそくメモを取り始めた。

 一般的に利用しやすい住宅ローンには民間ローンと、公的ローンの2種類がある、とFPは言う。

「よく耳にされる[フラット35]は民間ローンの一つですが、住宅金融支援機構がバックアップするローンになりますね」

  民間ローン 公的ローン
  民間ローン フラット35 財形住宅融資
融資元 銀行など民間金融機関が直接融資するローン フラット35:民間ローン債権を「住宅金融支援機構」が買い取って証券化し、バックアップするローン 国や自治体による住宅ローン
借り入れ条件 融資元の金融機関の審査を通過する必要がある(別途大きなローンがあったり、過去に返済が著しく滞ったりした経歴のある人は審査が通らない可能性もあり) 勤務先の財形貯蓄を1年以上行っていて、貯蓄残高が50万円以上ある人
借り入れ可能額 希望額が借入可能かどうかは、世帯収入や勤務先、勤務歴などを鑑みて、融資元の金融機関の審査を通過する必要がある。 貯蓄残高の10倍。最高4,000万円まで。
金利タイプ  変動金利型、固定金利型が選べる 長期固定金利型。最長35年の返済が可能 5年固定金利制で、5年ごとに適用金利を見直す。
金利 0.25~2.5%程度(2023年5月現在。ローンによって異なる) 1.850%(2024年9月時点) 1.21~約1.45%(ローンによって異なる)
個性 成人病や、がんなどの3大疾病にかかるとローン残高が控除されたり減額されるものなど個性豊かな付帯条件がある 子育て世代、Iターン移住者を支援するプラン、フラット20、フラット50など、返済期間が異なるプランもあり 60歳からのリフォームや建て替えに対応するプランや、リノベーションに対応するプランがある
資料を元にトウシル編集部が作成

「フラット35って、よく聞く言葉なんですが、これって普通の民間ローンの一つなんですか?」

 理香が恐る恐る尋ねる。

「フラット35とは、最長35年の返済ができることから名前がついた住宅ローンです。借りている全期間の金利が、長期固定金利で変動しないのが大きな特徴ですね。ただし、変動金利に比べて比較的金利が高めなのが注意点です」

 民間の銀行や信用金庫などで「フラット35」を申し込むと、銀行は契約後にその住宅ローン債権を、国土交通省が所管する「住宅金融支援機構」が買い取ったり、保証したりするしくみになっているのだ、とFPは説明してくれた。

 金融機関で住宅ローン支払い時に必要になる「保証料」は、買い取ってくれた国が保証する、という位置づけで運用されているため、保証料や繰り上げ返済手数料が無料になる。

 さらに、「非正規雇用や個人事業主もマイホームを持てるようにする」、という国の戦略を後押しするという目的のもとに作られた住宅ローンのため、借入時の審査が、比較的通りやすいのも特徴なのだそうだ。

 ふんふんと聞きながら熱心にメモを取っていた理香は信一郎を見上げた。

「うちは…これじゃないわね」

「うん。最長35年にメリットはあんまり感じないな。それに金利が高い[固定金利]をわざわざ選ぶのもピンとこないね」

「変動金利と固定金利、みんなどっちを選んでるんでしょう? 今はどっちがトクなんですか?」

 おそらくこの質問は幾度となく受けてきたのだろう。FP氏は住宅ローン利用者のグラフをパソコンで開いて見せた。

住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】 

「多くの方が変動金利を選択されている、というデータが出ています。改めてそれぞれのメリット・デメリットを整理してみましょう」

変動金利/固定金利/フラット35のメリット&デメリット

  変動金利 固定金利 フラット35(住宅金融支援機構の連携ローン)
2024年9月時点 約0.25~1.0%が目安 住宅ローンによって異なるが、約1~3%程度が目安 1.760~3.070%
知っておくべきこと 金利が変動すると返済額も変動する

金利上昇時に配慮措置がある

[配慮措置1]5年ルール:金利が変わっても返済額は5年間据え置かれる

[配慮措置2]125%ルール:6年目以降で返済額が変わる場合でも前の返済額の125%以上にはならない
金利が変動しても返済額は変動しない

固定2年、固定5年、固定10年など期間を決めることができる

固定金利期間が長い契約であるほど、住宅ローン金利は高い傾向に。固定金利期間が終わったら変動金利にするか固定金利にするかを再度選択する必要がある
民間ローンと住宅金融支援機構の連携ローンの2種類がある

金利が変動しても返済額は変動しない

最長35年間借り入れできる
メリット 金利が下がると、返済額が下がる 返済額が一定なので資金計画が立てやすい 比較的審査が通りやすい

保証人が不要

前倒しで繰り上げ返済しても手数料がかからない
デメリット 金利が上がると、返済額が上がる

金利変動によって、良くも悪くも返済計画が変わりがち
変動金利に比べて金利が高い傾向がある

借り換えなど、返済プランの再検討を忘れがちになる
市場金利が下がっても返済額は変わらない

住宅金融支援機構が決めた技術基準をクリアした物件にしか使えない
各種資料を元にトウシル編集部が作成

「ニュースで日銀が[利上げ]するって言ってたのって関係ありますよね?」

 信一郎が表を見比べながら言う。

「そのとおりです。政策金利の追加利上げを日銀が発表したので、銀行からの借入時の利息が上昇傾向にあります。住宅ローンの金利も上昇する可能性が高いですね」

「短プラ」って聞いたことありますか? とFPが問いかけ、理香は首を横に振った。信一郎は「名前だけはなんとか…」と首をひねる。

「金融機関が優良企業に対して融資する際、1年未満で融資する「短期プライムレート」と、1年以上の長期で融資する「長期プライムレート」という金利比率があります。短期プライムレートが住宅ローンの「変動金利」、長期プライムレートが住宅ローンの「固定金利」の基準となります。

 これまで、固定金利はじわじわと上昇傾向にあったが、2024年夏に、日銀による追加利上げが発表されたため、これまでほぼ動きのなかった住宅ローンの「変動金利」も上昇の可能性が出てきた、と、FP氏はそう淡々と続けた。

「どこまで上がるんでしょう? 返済が苦しくなるくらい上がる可能性はありますか?」

 心配げに言う理香に、FP氏は「変動金利の場合、急な金利上昇でも返済が負担にならないように救済措置があります」と言葉を続けた。

5年ルール 金利が変わっても返済額は5年間据え置かれる
125%ルール 6年目以降で返済額が変わる場合でも前の返済額の125%以上にはならない

 こうしたルールが設定されているため、金利が急に上昇しても、翌月からの支払いが激増する、という不安は少ないのだ、とFP氏は理香に丁寧に説明する。

「近い将来、金利が上がっても、すぐになんかしなきゃいけないってわけじゃないんですね」
理香の不安げな顔が少し和らいだ。

 自分たちが選ぶとしたら、今後の変動のリスクはあるものの、やはり現状の金利が比較的低い「変動金利」にしたい、という夫婦の言葉に、FP氏はうなずいてみせる。

「それならば、民間金融機関の住宅ローンの中から、変動金利の住宅ローンをいくつか、見てみましょう」

 住宅ローン比較サイトを開いたFP氏は、いったん金利の低い順に並べ替えした「低金利ランキング」を二人に見せた。

「わ、スゴイ。400件以上ヒットする…それだけ商品があるっていうことだな…」

「え、0.3%台の住宅ローンもあるの?」

 こんなに安くて、保障とか大丈夫なんですか? という理香の不安げな声に、FP氏はうなずいてみせる。

「ネット銀行系の住宅ローンはやはり比較的安い金利の住宅ローンが多いですね。ただし*団信に追加する付帯条件や返済年数によって、実際の返済額や、総返済額は変わってきます。しっかりと付帯条件を見て選ぶことが重要です」

*団信:正式名称は「団体信用生命保険」。住宅ローン専用の生命保険で、契約者が死亡または高度障害状態になり、返済ができなくなった時、住宅ローンの残債に相当する保険金が支払われ、残債がゼロになる。多くの金融機関では、住宅ローンを契約する際には、団信への加入が必須条件とされている。住宅ローンの返済期間中に加入することはできず、また加入後にプラン等を変更することもできない。

「元利均等返済」と「元金均等返済」どっちがトク?<7-3>夫婦、住宅ローンを学ぶ>>来週金曜公開予定!

(中桐 啓貴)

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