U-MO走る倉吉市「ぼちぼち」な街づくりの可能性 グリスロが生み出す地域社会と観光の新たな姿
東洋経済オンライン / 2023年11月15日 11時40分
時を超えて、
今も静かさにたたずむ
古き町並み。
人々の温もり優しさを
漂わせながら
日本の古きよき時代を
思わせる風情。
鳥取県のほぼ中心に位置する、倉吉(くらよし)市の観光案内冊子の表紙に刻まれた一説だ(句点など、原文ママ)。
実際、倉吉を訪れてみると、確かにそうした風情を肌身で感じる。
代表的な観光スポットである「赤瓦・白壁土蔵群エリア」では、休日でも観光客がごった返すことはなく、平日は静かな街並みの中でたまに観光客に出会う程度。こうした、「ほどほど」「ぼちぼち」な感じが、心地よいのだ。
また、商売の目線で少々きつい表現をすれば、「観光地であることを主張し過ぎるような、(モノを売らんがための)いやらしさがない」ところが、気持ちいいとも言える。
人口は5万人弱、年間観光客数は約60万人。この町が今、「場所と場所」「人と場所」そして「人と人」がつながる新たなプロジェクトに乗り出している。
プロジェクトの名称は、「倉吉市周遊滞在型観光地モビリティ向上計画」。そこから、全国の市町村が“学ぶべきこと”がいろいろあるように思う――。
2025年「県立美術館」開館が契機
倉吉市内には、古き良き時代を感じる「赤瓦・白壁土蔵群エリア」のほか、梨の産地であることから全国唯一の梨テーマミュージアム「鳥取二十世紀梨記念館 なしっこ館」、日本最古の円形校舎をリノベーションし、約2000点のフィギュアを展示した「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」など、さまざまな観光スポットがある。
これらに加えて、2025年には鳥取県立美術館が開業する。現在、その工事が着々と進んでいる状況だ。
こうした観光スポットは、東西約2.5km、南北500mほどのエリアに点在している。だが、それぞれを巡るためにクルマを駐める市営駐車場がエリア内に分散しており、利便性が悪く、観光客の市内滞在時間が短いことが長年、観光施策のネックとなってきた。
「クルマだと近いが、徒歩だとちょっと遠い」といった距離感だ。
特に休日は、赤瓦・白壁土蔵エリアに近い駐車場にクルマが集中してしまう。それが、倉吉市や商用関係者、地元住民の間で共通認識となっている課題であった。
倉吉市では、こうした状況を打破する観光環境の整備が必要であることは、もちろん理解している。また、街の魅力づくりをさらに進め、倉吉のファンやリピーターを増やして、できれば移住促進にまでつなげたい。そんなイメージも、持っている。
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