BYDだけじゃない! "中国EV"は日本で売れるか 「予約時の頭金がたった1万円」の商用車も
東洋経済オンライン / 2023年11月15日 9時30分
李克強前首相の突然の死、日本人駐在員の逮捕など不吉なニュースが続く中国。経済成長が鈍化し、直接投資が初のマイナスになった「世界の市場」から企業が逃げ始めた。
『週刊東洋経済』11月18日号の第1特集は「絶望の中国ビジネス」。共産党が経済よりも大事にしている「国家安全」は中国をどう変えていくのか? 日本企業のビジネスへの影響は? 匿名座談会や特別対談など、豊富な記事でその答えをお届けする。
「EVによる日本の新たな未来をここから始める」
【写真を見る】モビリティショーで脚光を浴びた中国製の最新EV
10月25日、BYDジャパンの劉学亮社長はジャパンモビリティショー(旧東京モーターショー)の場で、記者たちを前に胸を張って宣言した。
EV販売台数で米テスラと世界トップを争うBYDはこの日、来春に日本で発売予定である航続距離555キロメートル(自社調べ)のセダン「SEAL(シール)」に加え、SUVやコンパクトカー、ミニバンといった日本市場でも人気の車種の新モデルを一挙に出展。同社のブースには、日本の自動車メーカー幹部も多く足を運んでいた。
普及ペースが鈍い日本市場
ただ、日本市場はEVの普及ペースが鈍い。
EVの世界販売台数は2022年に700万台を突破し、乗用車市場全体の1割を占める中、日本は5万8813台で、割合は1.7%にとどまる。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の大手3社を中心にHV(ハイブリッド車)が環境にやさしい車として市民権を得ており、「世界的に見ても特殊な市場となっている」(ホンダ幹部)。
中国勢はそこをチャンスと見ている。日本車各社のEVが浸透していないうちに、先んじて市場を開拓しようとの思惑が透ける。
BYDは今年2月に日本初出店を果たしたばかりだが、25年までに100店舗に増やす計画だ。乗用車の販売台数は今年1〜9月の累計で886台だという。
「台数もそこまで多くないし、脅威とは思っていない」(トヨタ系販売会社幹部)との声があるように、中国製EVが日本で普及するかは未知数だが、トラックなど商用車の分野では状況が異なる。
大手企業の採用が相次ぐ
モビリティショーでは、物流機器を手がける日本のヤマト・インダストリーと中国で自動車の開発支援を行うIATが、中国のEVベンチャー「金琥汽車」が量産する商用バンをベースにした「JEMY EV48」を合同で展示した。
来秋に税込み400万円以下で発売する計画。貨物配送業者が荷室内をかがまずに移動できるよう車高を高くするなど、現場のニーズに合わせた設計が特徴だ。
「予約時の頭金は1万円で十分だ。来年10月からの納期を守れない場合、1カ月遅れるごとに10万円値引きする。BtoBがメインだが、個人向けのカスタマイズも受け付ける。5000台売れたらさらに輸入を拡大したい」とヤマト・インダストリーの池添洋一取締役は意気込む。
さらに小型商用車の領域では、日本の大手企業が低価格の中国製EVを次々と採用している。
日本のEVベンチャーであるASFは、「ASF2.0」を中国の広西汽車系に生産委託。佐川急便、コスモ石油マーケティングなどに納車した。
同じくEVベンチャーのフォロフライは東風汽車系の車体を活用。物流大手SBSグループに1万台の納入が決定し、大手のコンビニやガス会社への納入実績も積み上がっている。
商用車は乗用車に比べブランドへのこだわりが小さいとみられ、日本における中国勢の突破口になる可能性がある。
横山 隼也 :東洋経済 記者
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