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「OJT偏重」の古い日本の人材育成がやばいワケ 「経営を教える会社」が大事にする育成方針

東洋経済オンライン / 2023年11月20日 11時0分

このようにかつては成長していた企業が一度その成長性に陰りが生まれると、どうしても組織は細分化され一人ひとりの裁量は減っていく傾向が生まれます。また、対応すべきリスクサイドの観点が多くなると、そのリスクを生じさせないようにあらかじめリスクの芽を摘むような管理手法になりやすいため、個々人が挑戦できる領域は減っていきがちです。こういった環境下においても、一昔前と同じようにOJTだけで次なるステップに必要な知見や能力を身につけられるとは到底思えません。

人は成功したときよりも、失敗したときにこそ、より多くのことを学ぶことができます。そうした思い切ったチャレンジングな機会を提供し、時には派手に失敗してもいいとされるような場を与えられない限りは、OJTだけで十分な育成ができるものではないのです。こういった時代において、Off-JTでは、企業としてはリスクを取らずして、失敗経験を意図的にデザインすることが可能です。

さらに付け加えるならば、これからの時代は「人生100年時代」と言われるようになりました。1つの企業、特定のスキルだけで職業人生を全うできる時代ではなくなったことから、至るところでリスキリング(学び直し)の必要性が叫ばれています。AIをはじめとして、さまざまな進化が非常に速いサイクルで訪れる環境下においては、今、目の前で向き合っている仕事に必要なスキルを磨くだけでは足りず、人生100年時代を生き抜くことが難しくなってくるでしょう。これからは、もっと先々を見据えた新たな能力の獲得が必要になってくるのです。こうした現業務で必要とされる能力とは別のスキルや知見を獲得することは、もはやOJTでは不可能に近く、今ほどOff-JTが必要とされる時代は過去になかったのではないでしょうか。

「人的資本経営」の意味

そう考えると、現状の年間3万〜4万円という日本企業のOff-JTにかける育成投資金額は低過ぎると考えていいでしょう。このままでは、日本企業の大きな成長は見込みにくく、日本経済全体としても、失われた40年・50年へと突き進んでいかないかという不安がもたげてきます。

ただ、明るい兆しは、そんな日本においても「人的資本経営」の重要性が叫ばれ、各社がその実践に向けて動きを始めたことです。この「人的資本経営」の中では、人的資本を最大化させるための具体手法が述べられ、リスキリング(学び直し)の重要性について強調されています。今こそ、この流れを踏まえて、各社の育成施策がより充実化されてくれることを願ってやみません。

ちなみに、グロービスにおけるスタッフ1人あたりのOff-JT予算は、少なく見積もっても日本企業全体の平均よりも10倍以上を投じています。

内田 圭亮:グロービス経営大学院教授

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