お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤
東洋経済オンライン / 2023年11月29日 7時30分
「ChatGPT」の公開からちょうど1年。瞬く間に世界を席巻したAI企業が、今度はお家騒動で衝撃をもたらした。
ChatGPTを開発するアメリカのOpenAIで、CEO(最高経営責任者)であるサム・アルトマン氏が突如解任され、わずか5日後に同職に復帰するという事態が勃発した。
事の始まりは11月17日。OpenAIのホームページに、リーダー交代に関するリリースが掲載された。そこにはCEOのサム・アルトマン氏が辞任し、CTO(最高技術責任者)を務めるミラ・ムラティ氏が暫定CEOに就くと明記されていた。
リリースでは、アルトマン氏について「理事会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直さを欠き、理事会の責任遂行を妨げているとの結論に達した。理事会は、同氏が引き続きOpenAIを率いる能力をもはや信頼していない」と説明。共同創業者であるグレッグ・ブロックマン氏も、理事会会長を退くことが記載された。
【図表で解説】OpenAIは非営利組織が支配する特殊な構造だ
従業員の署名も効き騒動は収束
突然の解任に慌てたのは、OpenAIに巨額を出資してきたマイクロソフトだ。11月20日、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは役員との話し合いの末、アルトマン氏とブロックマン氏が同社へ入社すると発表した。
そこに今度は、OpenAIの従業員たちが行動を起こす。約9割の従業員が理事会の判断に猛抗議する文書に署名し、退職も辞さないと脅しをかけたのだ。これがきいたのか11月22日、OpenAIはアルトマン氏のCEO復帰を発表。ブロックマン氏も復帰となり、6日間の騒動はいったん終わりを迎えた状態だ。
アルトマン氏本人はもとより、マイクロソフト、そして従業員にとっても想定外だった、理事会による解任劇。そこから見えてくるのは、OpenAIという複雑な組織が抱えるジレンマだ。
OpenAIは2015年12月、アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。
AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた。
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