伊藤園「ボトル缶コーヒー」値上げしても好調の訳 ボスやジョージアなど強豪商品を上回る勢い
東洋経済オンライン / 2023年11月30日 7時50分
さらに、伊藤園は2007年にタリーズブランドを用いたコーヒー飲料事業を開始。2009年に発売したボトル缶コーヒーが同事業の成長を加速させ、2017年にはブランド全体の出荷数量で1500万箱を超えた。
順調に売り上げを伸ばしてきたタリーズ飲料だが、2017年から2018年にかけて強い逆風が吹き付けた。ペットボトルコーヒーの台頭だ。
2017年に、サントリー食品インターナショナルがペットボトルコーヒー「クラフトボス」を発売すると顧客の支持を受け、瞬く間に需要が拡大。以降もペットボトル需要は衰えを見せず、2022年のコーヒー飲料市場におけるペットボトルのシェアは40%を超えている(インテージSRI+データ)。
ボトル缶が主力のタリーズ飲料の売り上げは、徐々に低迷していった。
ところが、である。2021年あたりからタリーズ飲料の売り上げは復調。翌年には、一気に過去最高の販売数量を叩き出した。
V字復活のきっかけは、コロナ禍で起きた顧客の「嗜好の変化」だ。
前出の相澤氏は、「コロナ禍で、味わいに対する消費者の感度がすごく上がった」と語る。「自分でコーヒー豆を粉にしてドリップする、あるいはコーヒーをアレンジして飲むといった消費者が増えた」(同)
独自の商品開発体制で味を追求
伊藤園はなぜ、消費者の嗜好の変化を捉えることができたのか。その理由は2つある。
1つ目は、タリーズコーヒージャパンとの綿密な関わり合いが、伊藤園の商品開発に生かされていることだ。
一般的に、カフェ事業とコーヒー飲料事業は、別々の会社によって展開されることが多い。
例えば、国内で「スターバックス」のカフェを運営するのはスターバックスコーヒージャパンだが、飲料はサントリー食品インターナショナルが販売している。イギリスの大手カフェチェーン、「コスタコーヒー」のカフェは双日とロイヤルホールディングスの合弁会社が運営するが、飲料の発売元は日本コカ・コーラだ。
一方、タリーズコーヒージャパンは伊藤園の100%子会社ということもあり、カフェ事業と飲料事業が垣根なく連携している。
具体的には、伊藤園が「こういう商品を作りたいんだけど、どんな原料を使えばいいかな」と相談すると、タリーズ側が「アイデアがあるので一緒に立ち会って検討しましょう」と応えるなど、両者が頻繁に議論を交えて商品を開発していく。
「単に、他社のブランドを借りて飲料商品を作っているのではない。(カフェと飲料事業の)活発なコミュニケーションが、商品開発の違い(味の違い)となって表れているのではないか」と、相澤氏は強調する。
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