「診療所の儲けは8.8%」と示した財務省の人海戦術 猛反発の医師会、「恣意的」の批判は妥当なのか
東洋経済オンライン / 2023年12月4日 8時0分
同じ2022年度の中小企業の経常利益率は、全産業平均で3.4%だったことと比べると、診療所は約5.5%も高い。また、同調査では、認可病床数が20~199床の中小病院の経常利益率は4.3%であることも示され、診療所と病院との間でも大きな違いがあることが明らかとなった。
「機動的調査」の結果が、財政制度等審議会の会合で初めて示されたのは、11月1日だった(財務省資料)。その翌日の2日に、日本医師会は、この調査結果に対してすぐさま反論した。「機動的調査」は、診療所が儲かっているという印象を与える恣意的なものだと批判した。
また、「機動的調査」は2020~2022年度というコロナ禍の3年間しか分析しておらず、それで結論付けることにも疑義を呈している。
しかし、前述したが、そもそも過去3年間しか事業報告書等を閲覧できなくしているのは、医療法施行規則であって、調査で恣意的に3年間だけ選んだわけではない。
医療界の反応をみると、「機動的調査」で、診療所はもうかったが病院はそれほどではないといわんばかりだったためか、診療所(開業医)と病院(勤務医)を分断するかのように調査結果を示していると受け止められたのかもしれない。
ただ、「機動的調査」の結果はほぼ全数を集計されたデータから出されたものである。EBPM(証拠に基づく政策形成)の観点からみれば、どのような印象を持つかが重要ではなく、データが指し示すエビデンスこそが重要である。
医療界は、賃上げを実現するためには診療報酬の大幅な引き上げを求めている。他方、財政制度等審議会の建議では、医療従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ、診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当と提言した。
診療報酬改定をめぐっては、何かと「日本医師会と財務省の戦い」という図式でみられがちだが、そうした見方は問題の本質を見誤る。
突出した利益は「政府の決めた価格が歪んでいる」から
多くの国民が、医療のためならば青天井でいくらでも喜んで負担を増やしてよい、というなら、高い経常利益率も容認されるかもしれない。しかし、物価上昇による生活苦に直面する国民が多い現状において、どんな理由であれ、さらなる負担増に反対する声が大きい。
他方、診療所の高い経常利益率は、自ら販売価格を決めてさまざまに営業努力を行った結果であれば、それは当然として得られた利益といえるかもしれない。しかし、社会保障分野の利益は、政府の規制がほぼなく競争性の高い業種の利益とはわけが違う。
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