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「診療所の儲けは8.8%」と示した財務省の人海戦術 猛反発の医師会、「恣意的」の批判は妥当なのか

東洋経済オンライン / 2023年12月4日 8時0分

ただ、事業報告書等は、そもそも紙媒体で届け出られており、閲覧できたとしても分析するのはかなり困難だった。

2023年度からは、その事業報告書等を電子化するなどして都道府県のウェブサイトで閲覧できるようにした。

そうした事情を踏まえ、財務省が各地にある財務局等と協力して、一般病院を経営する医療法人と一般診療所を経営する医療法人が届け出た、2020事業年度から2022事業年度の事業報告書等を入手して、医療法人の経営状況等を調査した。事業報告書等には、貸借対照表や損益計算書、許可病床数などが記されており、事業収益、費用、利益などが把握できる。

ただ、一部の都道府県等では、事業報告書等の閲覧を、窓口での対応しかしておらず、写しの交付ができないという制限を設けていたりしたため、分析に用いることができなかった。2023年度からウェブサイトで閲覧できるようにするよう、厚生労働省が求めているにもかかわらず、それに応じていない自治体があることが、調査の過程で明らかとなった。

その自治体には、医療法人の事業報告書等の閲覧を制限しなければならないようなやましい事情でもあるのだろうか。隠さなければならない情報などないなら、デジタルでの全面公開を早期に行うべきである。

結局、47都道府県のうち38都道府県から、2万1939法人の医療法人の過去3年度分の事業報告書等が、「機動的調査」で用いることができた。

この法人数は、厚生労働省が実施し、診療報酬改定の際の基礎資料ともなっている「医療経済実態調査」の有効回答施設数と比べると、桁違いに多いものである。2022年度の「医療経済実態調査」での有効回答施設数は、病院が1218施設、診療所が1706施設である。

どちらの調査結果が信頼できるかは、推して知るべしである。

厚生労働省や医療界からすれば、虚を突かれたことだろう。まさか、財務省が各地の財務局を動員して、利用可能なほぼすべての医療法人の事業報告書等を入手して分析することなど、かつてないことであり、そこまで人海戦術で実施するとは想像できなかっただろう。もともと、各地の財務局は、予算に関連して調査する業務も担っている。

コロナ禍が対象なのは「3年分しか閲覧できないから」

分析に用いた医療法人のうち、認可病床数が0床である医療法人、つまり無床診療所である1万8207法人について、2022年度の経常利益率を集計したところ、平均で8.8%だった。これが、「機動的調査」で明らかとなった。

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