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ゼンショー「9年ぶり増資」で攻勢も、直面する不安 「外食業世界一」を目指し、M&Aを加速

東洋経済オンライン / 2023年12月4日 7時50分

しかし、海外のトップ企業に並ぶには、まだまだ遠いのが実状だ。例えば、アメリカで上場する外食企業で最も売上高の大きいスターバックスは、2023年9月期売上高が359億ドル(約5兆2000億円)と、ゼンショーをはるかに上回る。

この先、ゼンショーはM&A先としてどのような企業に照準を定めるのか。世界トップ企業との売上高の差を考慮すると、まずは「ファストフード」業態が浮かび上がる。世界で多くの店舗を出店しているブランドが多く、買収すれば事業拡大に寄与する。

実際に、今年4月にロッテリアを買収した。ロッテリアは海外への進出を目論む。「ロッテリアは海外展開も強化していきたい」と、ゼンショーの丹羽清彦執行役員は意気込む。

フランチャイズ展開をする企業であることも、M&A先の候補として挙げられる。前出のAFCやスノーフォックスは、北米などで3000店舗以上を持ち、ほとんどの店舗をFCで展開している。

FC展開をすることで、出店時のリスクを低減することが可能だ。店舗などの固定資産を持つ必要がなく、速やかに出退店を行える。

勢いを増すゼンショーだが、同社の過去のM&Aについては、すべてが成功しているわけではない。2002年にアメリカハンバーガーチェーンの「ウェンディーズ」をダイエーから買収し、フランチャイズ展開していた。

しかし、ウェンディーズの事業は思うように成長が見込めず、2009年のフランチャイズ契約期間の満了をもって契約を終了した。

今後も企業買収を継続すれば、減損のリスクを抱え込むことにもなる。スノーフォックスの買収で発生したのれん資産の895億円は、AFC買収の際と同様に、今期中に商標権に組み替える予定だ。商標権に組み替えることで減価償却する必要がなくなり、のれん償却負担は生じない。

一方で、商標権は毎年減損テストを行うことになる。買収した企業の経営状況がよくなければ、大きな減損が発生する可能性があるということだ。

ゼンショーは今2024年3月期上期(2023年4~9月期)に既に548億円の商標権を計上している。ここにスノーフォックスの895億円が上乗せされると、1400億円を超える商標権を抱えることになる。

財務基盤も盤石とは言いがたい

ゼンショーは、財務基盤が盤石とは言えないことも気がかりだ。

ロッテリアなどの買収では、劣後ローンで合計400億円を資金調達した。スノーフォックス買収の際は、900億円をブリッジローンで調達した。その結果、2024年3月期上期末の負債は4697億円と、前年同期から1000億円以上も増加した。

自己資本比率も同25.4%と、水準はけっして高くない。競合する吉野家ホールディングスの直近決算の自己資本比率は51.4%、同じくすかいらーくホールディングスも38.5%であることと比べると、ゼンショーの低さが際立つ。

今回の増資によって一時的に自己資本が膨らむが、減損リスクを考えると、さらに自己資本比率が低下することも可能性としてはある。

フード業世界一への道のりは、たやすくはない。まずは今回調達する500億円の資金をどこに振り向けるのか注視したい。

金子 弘樹:東洋経済 記者

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