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EVの「スマート機能」、中国と海外で人気度に落差 車内エンタメ重視の中国、走行性能優先の欧米

東洋経済オンライン / 2023年12月8日 17時0分

中国市場では自動運転やインターネット接続などのスマート機能がEVの人気を左右する。写真は中国の蔚来汽車のEV「ET5T」の運転席(同社ウェブサイトより)

「EV(電気自動車)の購入を検討する際、中国の消費者はスマート化や自動運転機能のレベルにこだわるが、欧米の消費者は(スマート化より)走行性能を優先する傾向がある」

【写真】VWがグローバルモデルとして開発したEV「ID.シリーズ」は、中国の消費者からスマート化が不十分と見なされている

大手コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーで自動車産業を担当する管鳴宇氏は、11月17日に北京で開催された業界向けフォーラムでそのような見方を披露した。

「中国ではEVのスマート化への注目度が欧米よりずっと高い。中国の消費者は、そのためにマイカー買い替えも辞さないほどだ」(管氏)

テレビや冷蔵庫を標準装備

管氏だけではない。フォルクスワーゲン(VW)中国法人の子会社で、車載AI(人工知能)技術の開発を手がけるフォルクスワーゲン・モブヴォイの張人傑CEO(最高経営責任者)は、同じフォーラムで次のように指摘した。

「中国の自動車メーカーは、スマートカーをまるでユーザーの(自宅、職場に次ぐ)『第3の居場所』のように位置付けている。そのため、大型のスマートカーでは『テレビ、冷蔵庫、ソファーのようなシート』が標準装備になっているが、海外市場のニーズには必ずしも合っていない」

このようなギャップは、中国メーカーの海外事業にとっても、外資系メーカーの中国事業にとっても、共に大きな課題になっている。現時点では、海外市場で売れている中国製EVはコストパフォーマンスに優れた中級モデルが中心で、(スマート化が売り物の)高級モデルはそれに及ばないのが実態だ。

例えば、テスラのEVは運転席周辺のデザインがシンプルで、中国製EVのような(多機能ぶりを強調した)スマート・ダッシュボードは搭載していない。しかし(中国を除く)グローバル市場では、そのことがテスラ車の競争力低下につながっていない。

反対に、外資系自動車大手がグローバル・モデルとして開発したEVは、中国市場の感覚ではスマート化が不十分で、消費者に敬遠されている。例えば、VWの「ID.シリーズ」はヨーロッパ市場での販売は好調だが、中国市場では売れ行きがぱっとせず、VWは大幅な値下げを迫られた。

注目すべきなのは、スマートカーの車載機器とスマートフォンの連携が、海外市場を開拓したい中国メーカーにとっても、中国市場で巻き返したい外資系メーカーにとっても、意外な障壁になっていることだ。

スマホアプリの違いが壁に

「車載機器と連携するスマホのアプリのエコシステムは、中国と海外では大きく異なる。例えば、中国で広く普及している地図アプリ『高徳地図』は、海外ではほとんど使われていない。中国メーカーが海外市場でスマートカーを売るには、別の地図アプリのプロバイダーと提携する必要がでてくる」。前出のマッキンゼーの管氏は、そう指摘する。

一方、外資系メーカーは中国の消費者の支持を取り戻そうと、スマート化関連の技術開発の現地化を急いでいる。例えばVWは、ドイツにあるソフトウェア開発子会社の初の海外法人を中国に設立した。

「中国市場と海外市場の現状は異なるが、自動車メーカーは腹を括ってスマート化の推進とそのための開発投資を続けるべきだ。海外の消費者も、徐々にスマートカーの新機能を受け入れていくだろう」。管氏はそう強調する。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は11月19日

財新 Biz&Tech

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