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横のエレベーターほかトヨタ自動車九州の独創性 なぜ「製造以外」でもアイデアが光るのか?

東洋経済オンライン / 2023年12月9日 9時0分

そのうえで、キーポイントになるのが「小さなアクションから大きく変える」こと。

「小さなアクション」とは、自前の資産を有効利用するという意味である。具体的には、トヨタ本社との関係から入手できるハードウェア、または地域のパートナーから入手できるモビリティを前提とする。

これらを九州域内のさまざまなパートナーと協力し、トヨタ自動車九州の関連施設内やその周辺で、トヨタ自動車九州の社員や地域住民が利用者となってトライ&エラーを行うという流れだ。

通勤や関連施設内・施設間の移動の”カイゼン”など、「できることからすぐ始める」、身軽な実証という形である。ここからは、具体的な事例を見ていこう。 

横のエレベーター

これは、工場間の社員の送迎を行う、乗り合いオンデマンドサービスのこと。場所は、北九州空港に近い、小倉工場と苅田工場である。

これまでは、定時定路線の循環バス、もしくはその都度、社内の申請プロセスに従い社員が借りる業務用車を使っていた。

業務用車の使用にあたっては、事前に予約管理を行う必要があるうえ、利用時にはそれぞれの工場の駐車場に業務用車を駐車して、さらに徒歩で目的地まで移動するといった手間があった。

これに対して横のエレベーターは、宮田工場内13カ所の停留所、苅田工場・小倉工場間各1カ所の停留所をアプリ上にセットし、停留所に設置されたタブレットから行きたい目的地をクリックするだけで、ミニバンなどの車両が迎えにきてくれる。まるでエレベーターに乗るような、簡単な操作のオンデマンド交通を実現したのだ。

複数人が違う目的地に向かう際、いわゆるAI(人工知能)等を使わず、運転手が自身の経験から最適ルートを考えて行動するのがポイントである。

実は、横のエレベーターという発想には、トヨタ自動車九州の過去の経験が生かされている。コロナ禍において、地元地域向けのワクチン接種対応車両を15台用意し、89の自治会、計500カ所のバス停で対応したのだ。

その際、地元ドライバーは「地元の道はカーナビなしで十分」という話があり、あえてAIオンデマンド化を導入しなかったことで、コストを抑え、さらに早期の実用化につながったという経緯がある。

こうした横のエレベーターは今、トヨタ自動車九州の敷地を離れ、大分市の富士見が丘団地でも活用される。

富士見が丘団地は、敷地面積110ha、人口6600人、高齢化率38%のいわゆるオールドニュータウンで、このエリアでの移動の足として、2023年11月20日から実証を始めたのだ。

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