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築180年、英で現役「川底の鉄道トンネル」の秘密 列車運休し徒歩見学会、SL時代の面影も残る

東洋経済オンライン / 2023年12月9日 8時0分

完成から約180年を経たロンドンのテムズ川底を通るトンネル。歩いて横断する見学ツアーが行われた(筆者撮影)

日本に初の鉄道が開業したのは1872年のことだ。当時の遺構である「高輪築堤」が品川駅近くで見つかったが、ロンドンにはそれよりさらに古く、19世紀前半に造られた鉄道構造物であるテムズ川の川底を通るトンネル「テムズトンネル」が現役で使われている。

【写真】テムズ川の下を通る築180年の現役トンネル内部はどうなっている?かつて蒸気機関車が走っていた駅の壁はあちこちが真っ黒なままだ

筆者は11月末に開かれたチャリティーイベントを通じて、普段は足を踏み入れることができないトンネル内部を見ることができた。築後180年を過ぎても使い続けられているその秘密を垣間見た。

初の鉄道開業と同じ年に掘削開始

いうまでもなく、イギリスは鉄道発祥の国だ。ストックトン・アンド・ダーリントン鉄道がイングランド北部に開通したのは1825年のこと。その後各地に鉄道が次々と生まれ、やがてロンドンでは1863年、初の地下鉄路線が開業している。

19世紀、ロンドンでは人々の交通需要が高まる中、街を流れるテムズ川両岸の行き来に頭を悩ませるようになった。マストが高い貿易船が市内まで入ってくることから、下流に橋を建設することは避けたい。そこで発想として浮かび上がってきたのが「テムズ川の川底に人が歩けて馬車が通れるトンネルを造ること」だった。

ところが、川底だけあって地盤が柔らかい。トンネルを掘るのは不可能と考えられたが、おりしも、イギリスで活躍したフランス出身のエンジニア、マーク・イザムバード・ブルネルがトンネル掘削の技術であるシールド工法を発明した。同氏らは1818年、この工法で特許を取得している。

テムズトンネルは1825年、川の南岸にある現在のロザーハイズ(Rotherhithe)駅近くに立坑の建設を開始。翌1826年には息子のイザムバード・キングダム・ブルネルと共に、対岸(北側)にある現在のワッピング(Wapping)駅に向け、本格的にシールド工法を使っての掘削に着手した。ただ、途中で大浸水が発生し、イザムバードも九死に一生を得るほどの大事故となる。財務問題も足を引っ張り、浸水からおよそ7年にわたってトンネル工事は放置される事態となった。

1834年の暮れ、イギリス政府から資金の借り入れに成功するや、翌年から工事を再開。その後も浸水や有害気体の発生などに悩まされたものの、工事再開から5年半後の1841年11月にトンネルはなんとか貫通した。その後、内装や照明などの工事を経て、明治維新より25年も早い1843年に歩行者用トンネルとして利用が開始されている。

歩行者用から鉄道トンネルへ変貌

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