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築180年、英で現役「川底の鉄道トンネル」の秘密 列車運休し徒歩見学会、SL時代の面影も残る

東洋経済オンライン / 2023年12月9日 8時0分

トンネルは内部に馬車を通すという構想があったことから2本造られ、その断面は人の身長よりもはるかに大きい(幅7m×高さ11m)。しばらくは有料の歩行者専用トンネルとして使われてきたが、どちらかといえば見世物小屋的で物見遊山の人々があふれ、中には暗いトンネル内で犯罪に遭うこともあったという。馬車が走ることは歴史上一度もなかったとされている。

トンネルの使用開始から20年あまりを経た頃、当時ロンドンに乗り入れていた6つの鉄道会社がそれぞれの列車を相互乗り入れさせることを目的に「イーストロンドン鉄道会社(East London Railway Company)」を設立。テムズ川の南北を走る列車を直通させるため、テムズトンネルに線路を通すプランが浮上した。1865年には同社がトンネルを買収し、それから約4年をかけて線路を敷き、列車が走れるよう改装した。ただ、当時は電車や電気機関車がまだ実用化されておらず、初期のロンドン地下鉄と同様、蒸気機関車(SL)が煙を吐きながらトンネルを行き来していた。

当時、SLがここを走っていたことを実感できる場所がトンネルや駅などに残っている。トンネル南岸側のロザーハイズ駅に行くと、壁はあちこちが真っ黒なままで、地上にある同駅の駅舎に隣接するブルネル博物館にある立坑跡の壁も煙で黒ずんでいる。

ちなみに、現在トンネル内を走っている車両(第三軌条から集電する電車、5両編成)は、地上を走る一般的な電車と同じサイズだ。俗に「チューブ」と呼ばれるロンドン地下鉄の小さなトンネル断面に合わせた車両よりはるかに大きい。

列車を運休して「トンネルツアー」

今も毎日列車が走っているこのトンネル内を歩いて見学できるツアーが開かれることは非常に稀だ。今回はロンドン交通博物館の催しの1つとして、チャリティーツアーの形で11月4週目の週末2日間に限って行われた。

一時期使われていなかったトンネルは、2010年にロンドン・オーバーグラウンド線の一部として運行を再開したが、その後内部を開放したのは2014年5月の3日間のみ。トンネルを歩くとなると、南北につながる線区を全面運休にし、第三軌条への通電も止めなくてはならない。一般の人々が歩けるように線路に降りるための特別の”ステージ”を設けたり、地面に取り付けられた機器類に特別なカバーをかけたりと大掛かりな準備が必要となる。

参加者が負担する費用は75ポンド(約1万5000円)と同博物館が主催するツアーとしてはかなりの高額だった。2日間のツアー本数やツアー1本ごとの構成人数を総計すると参加者総数は延べ1000人に達し、総収入は7万5000ポンド(約1500万円)となる。とはいえ、一般に開放される可能性が極めて低いところの公開とあって、発表と同時にほぼ売り切れ。数十人分の枠を慌てて追加したが、それもすぐに売れてしまったという。

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