1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

ド文系でも腹落ち「微分」を成り立ちから理解する ズボラな発想から緻密な予測をする数学が生まれた

東洋経済オンライン / 2023年12月11日 11時0分

ですので、砲弾の進む方向(=砲弾がどの方向から当たるか)がわかれば、より効果的にダメージを与える戦略を考えることができます。となると、砲弾の進む方向についても、数学を使って計算できるようになりたいですね。

すでにヒントはあります。というのも、先ほど話したように、砲弾の軌道は放物線と呼ばれる曲線(図2-4のようなアーチ状の曲線)で表せるとわかっているからです。

すでに砲弾の軌道のことはわかっているので、砲弾の“軌道”と“進む方向”の関係が分かれば、進む方向についても計算できるに違いありません。結論から言ってしまえば、「短い時間を考える」という微分の発想によって、この問題を解決することができます。

砲弾は、時間とともに飛んでいく方向が変わっていくわけですが、例えば0.1秒や0.001秒などの短い時間を考えてみましょう。それだけ短い時間であれば、砲弾が飛ぶ方向はほとんど変わりません。

より正確に言うと、実際は短い時間であっても少しは変わっているのですが、時間が短すぎて、無視できるほどしか方向が変わらないということです。つまり、非常に短い時間であれば、砲弾はまっすぐ飛んでいると考えてもよいのです。

微分積分という緻密な予測をするための数学が、このような「ズボラな」発想に支えられているというのが、微分のおもしろいところです。

まっすぐ飛んでいるとみなせるのであれば、話は簡単です。あとは、具体的にどの方向に飛んでいるのかさえわかればすべて解決します。結論を言ってしまうと、砲弾がどの方向に飛んでいるのかは、図表2-5のようにグラフに一本の線を引くだけでわかります。

この線は、曲線(この場合は放物線)に接している直線で、数学の用語で「接線」といいます(“接している線”という意味)。この接線が、その瞬間に砲弾が飛んでいる方向を表しています。なぜそういえるかは、放物線をズームアップして見てみると分かります。

放物線と接線が接している点のことを接点というのですが、その接点の周辺を虫メガネで倍率100倍にズームアップしたのが図表2-5の右側の図です。

微分の発想

このように、ズームアップして見ると、放物線と接線がほぼ重なり合って、見分けがつかなくなっていますね。つまり、放物線そのものは曲がった線(=曲線)ですが、その一部をズームアップすると、接線(=直線)と区別がつかなくなるのです。

実は、これと似たようなことを私たちも日常で経験しています。私たちが住んでいる地球は、宇宙から見ると丸い形をしています。でも私たちは、水平な大地の上で暮らしていると感じているでしょう。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください