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営利と非営利をはっきり2つに分けられない理由 「国家や株式会社」がどうしてもできないこと

東洋経済オンライン / 2023年12月12日 9時30分

このように、もう誰も欲しがっていないのに利益を上げ続けるシステムがすごいスピードで回り続けている背景には、テクノロジーの発展があると思っています。

ここもD×Pの視点から読み替えると、ユキサキチャット(D×Pが運営するLINE相談事業)はそのテクノロジーを使って、どうしても世帯や家族が最小単位として考えられてしまう日本社会において個人への支援を届けることができています。これはテクノロジーの正の側面だと思います。とはいえ地球全体で見ると、本来は一民間企業であるGAFAが国民国家を超えたインフラになってしまっている状況は問題です。

非営利の起源

今井:まさにその通りですね。その巨大なインフラとは比較にもならないですが、約10年前にD×Pを設立してから、子どもたちのセーフティネットをオンラインで作ってきてユキサキチャットの登録者は1万2000人を超えてきました。

食料支援は累計で17万食、給付金は6000万を超えるようになってきて、自分たちとしては国とか株式会社ができないことをやってきたという自負があります。民間から独自で寄付を集めて、こどもたちをサポートする仕組みをつくっています。昨年だと約1.9億の予算のうち91%を寄付で支えてもらっています。

こういう活動をしてきたなかで、「非営利の起源」とは何かを考えないといけないと思いました。たぶん非営利の起源って民主主義と関係があると思っているのですが、本書を読んだことでそのあたりの解像度を上げていきたいと強く思いましたね。

青木:そうですよね。やはり民主主義と資本主義がセットになって考えられていますけど、実は民主主義には別の側面もあります。資本主義は基本的に、労働したら対価があるというふうに交換原理で成り立っています。

でも、のりさんが言っている非営利って交換原理ではないのだと思っています。あえて合理的に説明するなら、「損して得取れ」に近い気がします。日本近世の商人文化には、「商売をするためには根本の社会を継続させなきゃ意味ないでしょ」っていうマインドがあったと思うんです。でも現代ではグローバル経済のように、個人的な利益の追求が肯定され、社会を破壊してもなおその追求が続くようになってしまった。これは明らかにおかしいですよね。

今井:本当ですよね。近江商人の三方良しって「売り手良し、買い手良し、世間良し」というように、ちゃんと世間が入っている。この時代に比べて現代の利って極めて個人主義的になってしまっています。しかも、三方良しって別に非営利だと思ってやっていないのではないでしょうか。確かに利を追求しているんだけど、社会の存在がその前提にはあるんですよね。

本来は目に見えない信用を可視化した「暖簾」

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