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東山紀之「まもなく引退」に危うさを感じる理由 "夢をあきらめた僕"は今後どうなっていくのか

東洋経済オンライン / 2023年12月15日 14時10分

東山さんの芸能界引退。今後どんな未来が予想されるのでしょうか(写真:「必殺仕事人」公式サイトより)

12月29日21時からスペシャルドラマ「必殺仕事人」(ABC・テレビ朝日系)が放送されることが発表されました。同作は年始に放送されることが多かったのですが、今年は東山紀之さんが初出演した2007年から初めてとなる12月に決定。これは年内での芸能界引退を表明している東山さんにとって最後のテレビ出演となることを意味しています。

【画像】記者会見のば 引退を表明している東山さんだが…

じわじわとあがる「引退はおかしい」の声

「必殺仕事人」は1972年のスタート以来、50年超にわたって放送されてきた人気シリーズであり、東山さんは長年主人公の中村主水を演じた藤田まことさんから引き継ぐ形で、渡辺小五郎を演じ続けてきました。

東山さんは、すでに情報番組「サンデーLIVE!!」(テレビ朝日系)とドキュメンタリー番組『バース・デイ』(TBS系)を降板。18年にわたってナレーションを務めてきた年末の風物詩「プロ野球戦力外通告」(TBS系)の降板も確実視されています。

さらに11月23日に最後の舞台出演を終え、残す“俳優・東山紀之”の出演作は、「必殺仕事人」と、同日19時30分から放送される主演ドラマ「大岡越前スペシャル~大波乱!宿命の白洲~」(NHK BS)のみ。それをメディアが報じたところ、じわじわと「引退はおかしい」「必要ないのでは?」などの声があがりはじめているのです。

あらためて東山さんの芸能界引退にはどんな経緯があり、現在業界内でどんな見られ方をしていて、どんな未来が予想されるのでしょうか。

なぜ東山さんは引退を決意したのか。旧ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏による性加害問題で、同族経営の弊害を指摘された藤島ジュリー景子前社長からの打診を受けた東山さんは社長就任を決断。9月7日に行われた1回目の会見では、新社長として矢面に立つ形で大半のコメントを担いました。

そこで東山さんはジュリー前社長から8月頭に打診を受け、「自分の運命だと(社長を)思って引き受けた」ことや「年内での引退」を発表。また、被害者救済の対応を聞かれた際、「夢や希望を握りつぶされた彼らと、“夢をあきらめた僕”でしっかり対話をすることがいいのかなと思います」と答えたところに無念さがにじみ出ていました。

引退を決断したのは、被害者救済はもちろん、ジャニーズのタレントと社名などを守るためであり、「東山さんの芸能人生を犠牲にすることで難局を乗り切ろう」とした方針がうかがえました。ただ会見では、性加害を「噂」レベルの話にとどめたこと、被害者救済の具体的な方法が提示されなかったこと、自身のハラスメント疑惑があることなどから、東山さんに対する同情の声は少なく「引退やむなし」のムードが漂っていたのです。

しかしその後けっきょく「ジャニーズ」をあきらめて「SMILE-UP.」に社名変更したほか、東山さんは所属タレントのマネジメントを行う新会社の社長就任を辞退。11月には被害者補償がはじまり、11月30日までに23人への支払いが終了したことが発表されました。さらに今月に入って「STARTO ENTERTAINMENT」という新会社名と福田淳社長の就任が発表。東山さんが引退を決断せざるをえなかった当時とはまったく異なる状況に変わりました。

「ありがとう」か「戻ってきて」か

実際、「ジャニーズ」という社名は消え、新会社の社長は外部から招聘したマネジメントのプロフェッショナルで、同族経営は終わり、被害者補償もスタート。最初の対応にいくつかの失敗があったことこそ否めないものの、その後に批判されるべきところは見当たりません。

そもそも会社や後輩たちを救うために、同族経営の加害者側に組み込まれるような社長就任を引き受け、引退を決断せざるを得なくなったのですから、「本当にこのまま引退でいいのか」「最後はおかしい」という声があがるのは自然に見えます。

東山さん自身のパワハラ問題は、ジャニー喜多川氏の性加害とは別の話でしょう。社長になったことで一部メディアが大きく採り上げられましたが、もし被害を受けた人がいて謝罪や補償を求めるのなら、当事者があらためて対応すべきことであり、現段階では東山さんの芸能活動を制限するものにはなりえません。

また、このような過去のハラスメントに関する問題は、時代背景、当時の感情論、環境などの影響も考えられる分、判断基準が難しいところがあります。現在の感覚でいつまでさかのぼって糾弾されるべきものなのか。法律で裁くことが難しい場合、ネット上で“私刑”のように攻撃してもいいものなのか。芸能界だけではなく、すべての業界にも該当しうることだけに、東山さんだけを糾弾するのは不自然でしょう。

これから29日に向けてメディアは「最後」「引退」を強調し、テレビ朝日も視聴率アップのためにその状態を望むでしょう。しかし、私たち一般層はそんな番宣絡みの状況に流されることなく、声をあげていいのかもしれません。

あげるべき声は「今までありがとう」「おつかれさま」なのか。それとも、「引退なんてしなくていい」「被害者補償が終わったら戻ってきてほしい」なのか。会見のときに東山さんを批判したという人も、後者の声をかけていいように見えるのです。前述したように、最初の会見以降、これだけ状況の変化が見られた以上、批判から擁護に手のひら返ししたことにはならないでしょう。

ただ、東山さんがすぐに「引退を撤回するか」と言えば、それは考えづらいところがあります。東山さんは最初の会見で「人生をかけて取り組む」と語っていただけに、少なくとも被害者救済の大半が終わるまで復帰の選択肢はないのかもしれません。

被害の申し出は11月20日の時点で834人と発表されただけに先は長そうなものの、東山さんは現在57歳と俳優として10~20年くらいは務められそうな年齢。今年のさまざまな経験は今後の俳優人生に生かせるでしょうし、たとえば演技における悲しみ、怒り、赦しなどの深みが増す可能性を感じさせられます。

本当の意味での「実力勝負」が始まる

もし東山さんが年内で引退し、その後に復帰するときがきたら、本当の意味での実力勝負がスタートするでしょう。これは東山さんに限った話ではありませんが、旧ジャニーズ事務所の恩恵やメディアの忖度を受けずに、どれだけ自身のスキルと存在価値を見せられるのか。

実際、「必殺仕事人」は東山さんが主役を務めはじめた2007年以降、旧ジャニーズ事務所の松岡昌宏さん、大倉忠義さん、田中聖さん、知念侑李さん、岸優太さん、西畑大吾さんが出演してきました。そのキャスティングは一定の視聴率を確保する一方で、往年の必殺シリーズファンの中にはいまだに難色を示している人も少なくありません。

旧ジャニーズは「時代劇に出演することでアイドルの知名度を上げ、ファン層を広げたい」、テレビ朝日は「時代劇の視聴者層にアイドルのファン層が加わることで視聴率を上げたい」という両者の利害関係が一致。50年超にわたるヒットシリーズをジャニーズ色に染め上げてきましたが、今回の騒動を経た来年以降、このやり方は通用しなくなるでしょう。

宙に浮いたままのドラマ「刑事7人」

また、東山さんは主に7~9月期で9年連続放送されている「刑事7人」(テレビ朝日系)の主役も務めてきました。今後は「『刑事7人』シリーズも本当にこれで終わりなのか」「引退後に復帰したら、主役としてシリーズ再開するのか」という点でも注目を集めるでしょう。

長年業界内では、東山さんの役作りにかけるストイックさは評価されてきました。体型維持だけでなく身体能力をキープするためにトレーニングを欠かさず、役にもとことん向き合おうとする。とりわけ舞台における歌と踊り、美しく見せる身のこなしなどは今なお「業界トップクラス」と称賛されているだけに、業界内の人々、特に舞台関係者が復帰に向けて動き出す可能性は十分あるでしょう。

本当にこのまま東山さんが「夢をあきらめた僕」のままで終わってしまったら、それは今回の騒動が2次被害者を生んだことにほかなりません。また、東山さんのファン、共演者、スタッフなども第3次被害者のようにも見えてしまいます。

もちろん被害者救済が第一であることは揺るがないものの、それに一定のメドが立った今はすでに引退を惜しみ、復帰を求める声をあげていい段階に入っているのではないでしょうか。

木村 隆志:コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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