ビジネスケアラー「介護休業」に引きこもりの罠 望むは仕事に穴を開けず介護も成功させること
東洋経済オンライン / 2023年12月16日 16時0分
家族の介護を理由に休業する「介護休業」は法律で認められた制度です。対象家族1人につき3回まで、通算93日休業できるものですが、その取得にあたっては注意も必要だと『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』の著者・酒井穣氏は語ります。「1回で93日をめいっぱい休んでしまうと、かえって介護離職のリスクが高くなるかもしれない」という酒井氏の解説を、同書から一部を抜粋・編集して紹介します。
長期の介護休業に潜む意外なリスク
いかなる企業であっても、法律には逆らえません。そして、介護のために休んだり(介護休業・介護休暇)、残業を拒否できたり(残業免除)、また、そうした行為によって不当に扱われない(介護ハラスメント防止)ということは、日本の法律で決まっています。
【図表で確認】介護休業制度を「知っているが利用したことはない」人の割合は?
法律とは最低限の倫理にすぎませんから、企業によっては、こうした法定の制度を大きく超えて、より仕事と介護の両立に悩む従業員のための制度を整えているところもあります。
今後は、健康経営の評価指標として、ビジネスケアラー支援の拡充が求められますから、こうした法定の制度を超えていくことは、より一般的なことになっていくでしょう。
もちろん、法定の制度を理解して、それを上手に活用していくことは、仕事と介護の両立をするうえで大切なことです。しっかりと、人事部(人事部がない場合は上司や経営者)と話をしながら、当然の権利を確保することを忘れないでください。
ただし、ここでどうしても注意しておきたいことがあります。それは、法定では対象1人につき3回まで、通算で93日まで認められている介護休業の実際の使い方です。
当然の権利だからということで、1回で93日をめいっぱい休んでしまうと、かえって介護離職のリスクが高くなるかもしれないのです。
マスコミでもよく取り上げられる引きこもりは、なにも、子どもにだけ起こることではありません。社会人にも引きこもりは起こります。これまで引きこもりとは無縁の人生をおくってきた人にとって「ちょっと休む」ことの怖さは、なかなか実感できないかもしれません。
しかし引きこもりに至る心理的なプロセスは、意外と誰にでも起こりえるものであり、そのはじまりは「ちょっと休む」ことなのです。実際に、社会人が引きこもりになる理由として最も多いのは「ちょっと休む」結果として、どんどん職場に適応できなくなってしまうことが最多(28%)なのです。
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