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日本生命、介護の「ニチイ」買収で描く成長戦略 本命の「海外大型買収」には慎重な姿勢が続く

東洋経済オンライン / 2023年12月16日 7時30分

介護事業に参入する方針を示した日本生命(編集部撮影)

「従業員数7万人の会社が、9万人の会社を買収することになる。買収金額以上に大きな重みがある案件だ」

【写真】ニチイホールディングスの買収に関する日本生命の説明資料

約7万人の従業員を抱える日本生命保険の役員は、11月末に公表した介護や医療事務、保育事業を手掛けるニチイホールディングスの買収についてそう解説する。

ニチイの株式を間接保有する投資ファンドのベインキャピタルなどと基本合意した買収予定金額は、約2100億円。金額面でいえば一般的には「大型買収」にあたるが、日本生命にとってはせいぜい中規模の案件といったところだろう。

1000億円超の投資案件が続々

日本生命は10月に、アメリカなどで保険の既契約を買い取る「クローズド・ブック(CB)事業」を展開するレゾリューションライフへの追加出資に1100億円を投じている。12月13日には日本国内で証券や銀行での窓販を手掛けるニッセイ・ウェルス生命保険の財務基盤強化に向けて、2500億円の増資を実施する方針も示している。

そうした日本生命の資金力の大きさを踏まえると、ニチイの買収は数ある投資案件の1つに過ぎないように見える。

ニチイの営業利益は200億円前後で、日本生命の本業のもうけ(基礎利益)6000億円前後と比べても収益への貢献度は小さい。

さらに言えば、ニチイをめぐっては介護などの同業者から「ベインがかなりコスト低減を進めた。利益を出し過ぎているのではないか」という声が聞こえてくる。

ニチイの従業員約9万人に不満のマグマ?

コスト削減のシワ寄せがニチイの従業員約9万人に及んでおり、「現場における不満のマグマがいつ噴出してもおかしくない」(介護事業者)状況だったようだ。

そうした声は当然ながら、日本生命の耳にも入っていたはず。だが、それでも約9万人の「巨大労務リスク」を抱え込むという決断に踏み切ったのはなぜなのか。

理由は大きく3つに分けられそうだ。

1つ目は、日本生命とニチイが長年にわたって提携関係にあったことだ。

日本生命とニチイは1999年に業務提携を結び、2001年に共同出資で介護や健康などに関する情報を提供するライフケアパートナーズを設立。さらに企業主導型保育所の展開でも連携しており、関係を深める中でニチイの実情をある程度把握していた。

そのためなのか、今年5月ごろに始まった買収交渉の中で、日本生命が提示した金額はほかの陣営と比べて「低く、1番手ではなかった」(ベインキャピタル関係者)という。ゆえに、資産査定に必要な追加資料を日本生命が求めても、当初はベイン側の反応が薄いという状況が続いた。

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