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みずほ信託、「ひとり親」を救うファンドの正体 社会貢献と会社利益の「二兎」を追えるか

東洋経済オンライン / 2023年12月21日 7時0分

離婚などで家を出たひとり親家庭にとって、住宅の確保は喫緊の課題だ。写真はイメージ(撮影:今井康一)

社会課題を解決しつつ、投資家の求めるリターンを提供できるか。

【写真】「篤志家にフィランソロピー(慈善)事業を提供したい」と意気込む、みずほ信託銀行の梅田圭社長

みずほ信託銀行は2024年度中にも、「ひとり親家庭」を支援する不動産ファンドを組成する方針だ。

みずほ信託がファンドを組成し、社会貢献に関心のある機関投資家や富裕層から資金を募り、首都圏のファミリーマンションを取得。一部住戸の家賃を低く設定し、ひとり親家庭に貸し出す。2022年末頃から担当部署で検討を始め、このほど具体化した。

「ひとり親家庭の『負の連鎖』を断ち切りたい」。みずほ信託銀行の梅田圭社長は、こう話す。2022年に梅田社長がひとり親家庭の支援を手がけるNPO法人の講演を聞き、「われわれが持つ不動産や投資家の情報を結びつけて、何かできないか考えた」(梅田社長)。

喫緊の課題は住宅の確保

ひとり親家庭の困窮が、問題視されて久しい。ひとり親家庭とは配偶者との死別や離婚などが原因で、独力で子どもを養育する世帯を指す。仕事と子育ての両立の難しさから、賃金が相対的に低い非正規で働いているケースが多く、4割以上の家庭が経済的に困窮しているとも言われる。

ひとり親家庭にとって喫緊の課題は、住宅の確保だ。特に専業主婦の場合、家庭の不和や離婚などを理由にそれまでの住宅を出て、次の住宅を探そうとしても、定職に就いていないため民間の賃貸住宅が借りにくい。

公営住宅は入居の抽選倍率が高いうえ、老朽化が進んでいたり交通利便性に難があったりする物件も多い。

住所不定のままでは保育所などの行政サービスが享受できず、子どもを預けられないことから定職にも就けず、貧困から抜け出せない負の連鎖に陥る。

行政やNPO法人などが生活支援サービスを提供する一方、「金融の力」でひとり親家庭を支援する取り組みを進めるみずほ信託。だが、金融商品として収益性を確立させることは一筋縄ではいかない。

その象徴が家賃設定だ。高い家賃を支払えないひとり親家庭と、高いリターンを求める投資家との目線のすり合わせは容易ではなく、現在も商品設計の模索が続いている。

2021年に厚生労働省が実施した調査によれば、ひとり親家庭の平均収入は父子家庭で518万円、母子家庭で272万円。家賃の支払いは年収の3分の1程度が望ましいとされ、そこから弾いた後者の家賃負担能力は、手取りベースなら月5万~6万円程度となる。

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