1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

みずほ信託、「ひとり親」を救うファンドの正体 社会貢献と会社利益の「二兎」を追えるか

東洋経済オンライン / 2023年12月21日 7時0分

ファンドを企画したみずほ信託銀行・不動産コンサルティング部の設楽彰憲班長は、「家賃相場が月15万円程度の2~3LDK住戸なら、5万円ほどで貸し出したい」とする。

通常のファンドに比べて利回りは落ちる

一方、安い家賃で貸し出せば投資家のリターンが減るうえ、マンションの管理や修繕費を賄いにくい。そこで、ひとり親家庭向けの住戸は全体の2割程度にとどめ、残りは相場並みの賃料で一般家庭に貸し出す計画だ。

家賃の引き下げがリターンに与える影響を薄めるだけでなく、ひとり親家庭向けと一般家庭向けの住戸を混在させることで、対外的に誰が低所得者層かをわかりにくくする効果もある。

表面利回りが4%で流通している1棟マンションにおいて、2割の住戸を3分の1の家賃で貸し出した場合、単純計算で利回りは約3.3%に落ちる。1%弱の下落は社会貢献の対価として、投資家に理解を求める。

「通常のファンドと比べて利回りは落ちるが、社会貢献に資することを投資家にアピールしたい」と、設楽氏は強調する。

ファンドの組成と並行して、NPO法人と連携したひとり親家庭の募集や入居者の自立支援も検討する。

賃貸マンション市場は価格高騰が進んでいることから、取得対象となる物件も事業会社が保有する社宅に照準を定める。社宅は好立地に立つことが多い一方で、入居者の退去が進んで遊休化している物件も多い。

ひとり親家庭の支援に共感した会社からも、相場よりも安価での社宅の提供を依頼する。取得した住宅は、賃貸前にリノベーションを施す。

社宅を首尾よく取得できるか

2024年度を目標とする運用開始に向けて、ファンド組成の準備を進めるみずほ信託。むろん、ひとり親家庭の支援という前例のない理念を掲げるファンドが、もくろみどおり軌道に乗るかは未知数だ。

まずは、運用対象となる社宅を首尾よく取得できるかだ。当初は、みずほフィナンシャルグループ自らが保有する社宅の拠出を検討し、運用実績を作ることを優先する。

ファンドに対してはすでに、社会貢献の理念に共感する投資家からの問い合わせも来ている。他方、市場にはESGを掲げる金融商品が豊富に存在する。

「ESGのうちE(環境)やG(ガバナンス)は色々とやっているが、S(社会)はアプローチが限られる」(梅田社長)。投資家が拠出した資金がひとり親家庭への住宅供給につながるという、社会貢献の一環であることを訴求できるかもカギを握る。

社会貢献と利益追求の二兎を追うみずほ信託の挑戦が実を結ぶかは、ESG投資が実際に社会に貢献できるかの試金石にもなりそうだ。

一井 純:東洋経済 記者

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください