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国大法改正「立法事実の公文書なし」が深刻な理由 国会軽視、立法の基本をないがしろにする行為

東洋経済オンライン / 2023年12月21日 7時50分

当初、運営方針会議は「国際卓越研究大学」に選ばれた国立大学法人だけが対象になるはずだった。国際卓越研究大学は、政府が設立した10兆円規模の大学ファンドから毎年、百億円~数百億円程度の助成を受けられる。そのため、運営方針会議の設置によるガバナンスの強化をセットにする、という理屈だ。

ところが、文科省は10月下旬に突如として、一定規模以上の国立大学も設置義務の対象に入れる改正法案を公表した。

結論ありきの「後出し」はだめ

改正法の中身の是非はともかく、立法事実を示す公文書が作成されずに改正法が成立してしまったこと自体が、大きな批判を呼んでいる。

何がどう問題なのか。

今回のケースで言えば、運営方針会議の設置対象を拡大する必要性は何で、それがどういう理由で、どこから出てきたものなのか――そうした立法の根拠たる事実を示せることが、立法の合理性を担保する。

立法の出発点である原案作成において、立法事実は土台になるものだ。原案作成の前に、まずは立法事実をよく調査し、検討すること。この順番が非常に大切である。

なぜならば、仮にもし、先に原案を固めてから、その原案に必要な材料を集めて立法事実とする順番であれば、それはもう「結論ありきの後出し」でしかないからだ。そのようなやり方では恣意的な立法になりかねないし、原案に都合の良い事実が意図的に集められる恐れもある。

そうした事態を防ぐためには、先にきちんと立法事実を整理する手順を遵守する。そして、適切なプロセスで進めた証拠として議事録を、時系列を改ざんできない形の公文書として残す。今回の改正法の原案作成過程では、こうした基本がないがしろにされていた。

立法事実の妥当性を審議できない

また、立法の妥当性を審議するのが立法府たる国会の役割だが、立法事実の過程を示す公文書がなければ、適切に審議をすることはできない。盛山大臣の「審議が終わってから公文書をまとめるつもりだった」という答弁は、国会の審議を軽視したと取られても仕方がない。

改正法を所管する文科省高等教育局の国立大学法人支援課に、上述の問題点について見解を問うた。担当者は「ご指摘はその通り。(原案策定の)過程を残すという意識が弱かった」と認めつつ「ただ、意図的に残さなかったというわけではない」と釈明した。

国のルールを決める立法のプロセスで大きな欠陥があったことは、イチ法案の手続き上の不備で済ましていい問題なのだろうか。

奥田 貫:東洋経済 記者

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