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パワー半導体でもニッチを攻めるミネベアミツミ 手綱を取るのは事業売却方針を一転させた人物

東洋経済オンライン / 2023年12月22日 7時30分

ミネベアミツミはパワー半導体などを含めたアナログ半導体を成長ドライバーとして位置づける(撮影:今井康一)

EV(電気自動車)だけでなく、巨大化する世界の電力市場のニッチ分野で競争力のあるメーカーを目指す――。

【写真】ミネベアミツミの半導体事業におけるキーパーソンは矢野功次・常務執行役員だ

そう高らかに宣言したのは、精密部品の大手ミネベアミツミの貝沼由久・会長兼CEOだ。M&A(合併・買収)巧者として知られる貝沼氏が、2023年11月の中間決算説明会で発表したのは、パワー半導体メーカー買収の決定だった。

買収するのは日立製作所の子会社「日立パワーデバイス」。買収金額は非公表だが、約400億円とみられる。パワー半導体は、電力の変換や制御などを担い自動車や家電、産業機器などで幅広く用いられている。

ミネベアミツミは2017年、旧ミネベアと旧ミツミ電機が経営統合して誕生した。ミツミ電機が展開していたアナログ半導体事業は当時、約200億円の売上高だった。その後M&Aを繰り返し、現在は800億円規模に成長している。さらに今回の買収で「1000億円を超える」(貝沼氏)という。

主に電池や電源、センサーの領域で存在感を示してきたところに、パワー半導体という「第4の柱」が加わる形だ。さらなる買収を含め、2030年度には売上高3000億円まで伸ばすことを目標としている。

実は売却候補だった半導体事業

拡大を続ける一方、「ミツミ電機と統合した当初、半導体事業は売却候補だった」と、貝沼氏は決算説明会の場で明かした。それを覆した背景には、ある男の熱意があった。

その男とは、同社の矢野功次・常務執行役員(61)だ。半導体事業部長を兼任し、関連するM&Aを立案。統合後の急成長を牽引してきた立役者でもある。

2017年の2社統合の際、両社の幹部が集まり、泊まり込みで今後の経営について話し合う「マネジメント合宿」が2回開かれた。矢野氏は当時、ミツミ電機側の半導体部門の責任者だった。

関東近郊のホテルで、矢野氏はミネベア社長だった貝沼氏と向き合い、アナログ半導体事業の必要性を訴えるプレゼンに臨んだ。

実はミネベアには半導体に苦い思い出があった。1980年代にデジタル半導体の製造に参入したが、技術革新のスピードについて行けず、事業を他社へ譲渡していたのだ。

その過去を知っていた矢野氏は、「とにかくデジタルとアナログの違いを理解してもらおうと必死だった」と振り返る。

「半導体」と聞いて一般的にイメージされるのは、CPU(中央演算処理装置)やメモリーなど計算や記憶をつかさどるデジタル半導体だろう。回路の微細化が進み、最先端の設備がなければ作れないため、莫大な額の投資が必要になる。

ピリリと辛い山椒のような存在感

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