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「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出

東洋経済オンライン / 2023年12月28日 9時0分

北京政府は、中華文明が何世紀にもわたって占めていた高位の座を奪還し、世界の覇権を握ろうとしている。プーチンのロシアは、ツァーリの栄光に包まれた旧ソビエト帝国の超大国としての地位を挽回しようとしている。

プーチンは西側諸国の力を侮り、少なくともウクライナの一部を服属させようと試みる一方、かつてロシアが支配していた中央アジアからベラルーシに至る周辺諸国をも視野に入れている。

北京政府は、プーチンの情け容赦ない対ウクライナ攻撃を容認する一方、アジア周辺地域で自国の力を誇示し、台湾を征服すると脅している。

これは、小国の主権を守る国際法から「力こそ正義」の世界へと歴史を逆行させるものである。ロシアも中国も、自分たちの思い描いたとおりに世界秩序をつくり変えようとしている。特に中国は、自国の社会形態が未来のかたちであると確信している。専制体制が権力と影響力を強めるにつれ、そのモデルが規範となり、既存の市場資本主義や民主主義に取って代わるおそれがある。

一方、民主主義社会における階級間の格差はますます広がり、特権はより強固なものとなっている。階級がほぼ固定化されている現実は、今日の状況が封建時代に最も似たところである。

ただし、中世後期に強力な君主たちが台頭してくるまで封建制を特徴づけていた分権的統治は存在しない。社会的階層化が進んだ結果、中道派の政党や政治家は隅に追いやられてしまった。

たとえば、2022年6月にフランス国民議会の選挙でエマニュエル・マクロン率いる中道右派連合が絶対多数を失い、極左・極右がともに多数を占めた。有権者が二極化すれば、民主的妥協はますます困難となる。特にアメリカの二大政党制ではそれが顕著である。

労働者不足が第三身分の台頭に道を開く

歴史的には、いまも目の当たりにしているように、危機は政府の統制強化や権力集中化の口実となりうる。

しかしながら、最悪の悲劇ですら、創造的実験を刺激し、新たな機会を開き、自由の再生を促すこともある。

最もよく知られている例が、14世紀の黒死病である。この致命的な疫病により、ヨーロッパでは実におびただしい数の人びとが死に絶えた。

その当時、自分たちは「終末」の世界に生きているのだと多くの人びとが信じたのは、驚くには当たらない。アメリカの歴史家バーバラ・タックマンの言葉を借りれば、「黙示録的な空気が漂っていた」のである。

しかし、その文明の破局が労働者不足を招いたことで、労働の価値は高まり、封建制秩序は崩れ、第三身分の台頭に道を開いた。さらにはイノベーションを呼び起こし、ヨーロッパを大航海時代に向かわせ、世界の海の征服につながったのである。

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