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「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出

東洋経済オンライン / 2023年12月28日 9時0分

さらに悪いことには、政策決定において国民の承認を避ける傾向が定着してしまうことも考えられる。環境保護主義者のなかには、COVID─19への対処策として講じられた一連の異例な措置について、人類と地球を救うために必要だと信じる規制の「試験運用」とみなす人もいる。

国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、自然が「私たちにメッセージを送っている」と述べ、新型コロナパンデミックやその他の感染症が起こる理由は、野生動物の生息地に人間が足を踏み入れるようになり、人間が動物からウイルス感染しやすくなったからだと考えている。

パンデミックと環境問題との関連性は、下流階級が犠牲を払いますます貧しくなる一方、(中世の貴族や聖職者に相当する)現代社会の上流階級はほとんど痛痒を感じないという「エコ中世的」世界観に通じるものがある。

新型コロナパンデミックとそれに伴う規制やオンラインワークへの移行も、大都市の衰退を加速させた。パンデミックの時期にアメリカの都市では殺人件数が急増した。もっと言うと、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコなど世界の多くの大都市も、近年さらに危険な場所になっているのは明らかである。世界各地の不安定状況は憂慮すべきレベルにまで達しており、封建時代の再来を予感させるものがある。

パンデミックによって不安や動揺が起こる以前から、街中での暴力行為や財産犯罪は増加していたが、これに対処しようという都市当局の強い意思がみえないため、大都市からの人口流出は加速した。

2010年から2020年にかけて、アメリカでは都市部の中心的な郡の人口は270万人減少したが、大都市圏の郊外・準郊外の人口は200万人増加した。2015年以降、大都市は小規模の市や町に人口を奪われる傾向にある。

2022年には、都市の犠牲のうえに農村部の人口も増加した。歴史を通じて、都市は文化と経済の発展の中心であり、イノベーションと社会的地位の上方移動(upward mobility)〔以下、「社会的上昇」〕を生み出す主要な拠点であった。今日みられる都市の衰退と都市からの人口流出は、ローマ帝国末期を思い起こさせるものがある。それは、より断片化した地域社会への回帰であり、そこから封建制秩序が生まれることとなる。

民主主義と権威主義の「ハイブリッド政権」

都市の衰退とともに、全世界で民主主義が衰退し、権威主義が台頭している。

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