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「新しい封建制」の到来から私たちは逃れられない ローマ帝国末期を想起する都市衰退と人口流出

東洋経済オンライン / 2023年12月28日 9時0分

フリーダム・ハウス〔訳注 世界規模で自由を守るために活動する国際NGO団体〕が2021年に発表した報告書によると、ヨーロッパですら民主主義は世代を超えて衰退しており、隣接するユーラシア諸国の政府は、選挙のような一部の民主主義的形式と権威主義的なメディア規制、市民デモや公然たる政権批判にたいする厳しい制限を組み合わせた「ハイブリッド政権」が大半だという。

一時は全世界が自由民主主義と市場資本主義に向けて進歩を続けていくように思われたが、いまや中国の習近平、ロシアのウラジーミル・プーチン、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアンといった専制君主や(彼らほど強力ではないにせよ)権威主義者たちの支配する新たなユーラシアの世紀がやってきかねない状況だ。

彼らの視線の先にあるのは、ジョン・ロックやジェイムズ・マディソンではなく、中国の皇帝やロシアのツァーリ、オスマン帝国の皇帝たちである。

中国は2001年のWTO加盟で、欧米の民主主義国家に近い体制に移行するものと広く期待されていた。だが結局のところ、経済大国へと躍進した中国は、個人の政治的権利や財産権といった自由主義文明の基本的要素を受け入れることはなかった。

現在の中国は、モンゴル帝国や14世紀の明王朝の時代と同様、立憲民主主義国家になる可能性はほとんどない。半永久的なカースト特権とテクノロジーにより社会統制を強めることで防御を固めたきわめて国家主義的な専制国家へと発展した。

ユーラシア的性格を持つ今日のロシアは、復讐心の強い国家(レヴァンチスト)でもある。冷戦の終結によりロシアは民主主義国家に発展するという楽観的見方もかつてはあったが、プーチン政権下で独裁色が強まり、過去の帝国時代に近づきつつある。

プーチンは国内統制を強める一方で、ツァーリやスターリンの領土征服を再現して帝国の版図を拡大しようとしている。ツァーリの時代と同様、ロシア正教会はプーチンの専制支配と民族主義的侵略を祝福している。

失地回復を図る専制国家

ロシアでも中国でも、専制体制は国家の偉大さと優位の正当性を誇る感覚と密接に結びついている。サミュエル・ハンティントンが四半世紀前に示した鋭い分析によると、専制君主は世界の舞台で自らの権力を主張する正当な理由として歴史的不満を持ち出すことがあるという。

ハンティントンは、「ワールド・コミュニティー」の構成メンバーであることを鼻にかけた欧米諸国が過去に行ってきた不当な扱いが怒りを買い、他の大国が失地回復を図るべく行動に出る時代に突入しつつあると指摘した〔訳注 「このワールド・コミュニティーという言葉自体が、婉曲に(自由世界を意味する)集合名詞となり、これによりアメリカと他の西欧諸国の利益を守る行動を正当化しようとしている」(『文明の衝突』鈴木主税訳、集英社、1998年)276頁〕。

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