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高橋源一郎「歎異抄」の生きる知恵を今のことばに 「歎異抄」は親鸞の「君たちはどう生きるか」だ

東洋経済オンライン / 2023年12月29日 20時0分

「ぼくたちのことば」に置き換えて書き上げた『一億三千万人のための「歎異抄」』は、どのようにして生まれたのでしょうか(写真:朝日新聞出版写真映像部・上田泰世)

この10年の間、親鸞の『歎異抄』を繰り返し読んできた作家の高橋源一郎さんが、みずみずしい「ぼくたちのことば」に置き換えて書き上げた『一億三千万人のための「歎異抄」』。今まで誰も読んだことのない『歎異抄』は、どのようにして生まれたのか。700年前の本を今に届ける意味を、高橋さんに聞いた。

『歎異抄』と『ゴジラ-1.0』

日本でも大ヒット公開中の『ゴジラ-1.0』が、12月1日に全米2308館で公開された。オープニング興収1100万ドルのヒットで外国映画の実写映画としては、2004年公開の中国映画『HERO』に次ぐ史上2番目となる記録で日本の実写映画としては歴代1位だという。公開日こそ2位スタートだったものの、その勢いは止まらず、12月4日にはついに全米興収1位にまで上り詰めている。このニュースを目にした時に、『一億三千万人のための「歎異抄」』を上梓したばかりの高橋源一郎さんの翻訳についてのこんなことばを思い出した。

高橋源一郎『一億三千万人のための「歎異抄」』で700年前の親鸞の言葉を現代に

「19歳の長男にNetflixで世界配信中の『PLUTO』を勧めたところ、全8話をノンストップで鑑賞していました。そのあとすぐに『ゴジラ-1.0』を観に行っていて、どちらの作品もものすごく面白かった、と。『PLUTO』は手塚治虫の『鉄腕アトム』の中のエピソード『史上最大のロボットの巻』のリメイクですし、『ゴジラ』にしても国内だけでも30作もシリーズ化されています。どちらも本質はきちんと残ったまま、新しい解釈で進化している、これも翻訳なわけです。

もちろん『歎異抄』の翻訳の場合は、映画のように新しいものを生み出していくわけではないけれども、わかりにくい日本語をわかりやすい今の日本語にしながら、何百年もの長い間、愛されて現代まで読み継がれてきています」

翻訳の意味とは何か。高橋さんは、<いま現在を生きる人びとの切実な問題に変換してみせる>こと、と考えている。『PLUTO』であれば、60年前のロボットの悲劇をAIという最新技術と共存していく現代社会に、全米ヒットとなった『ゴジラ−1.0』は、戦争のトラウマを持つ帰還兵の葛藤が現代的なテーマとして捉えられたことだろう。では700年も前の宗教書である『歎異抄』の場合はどうか。

「『歎異抄』の書かれた時代は、今から700年も前の戦乱と飢餓と天災という大変な世の中です。そんな大昔の話と思いがちですが、今だって戦争と紛争、そして災害の時代ですよね。だからこそ、その先を見通すような思考が必要なのですが、今の作家は、その瞬間に面白いと思われるようなものを求められ、書くそばから消費される運命にあります。それでは、その先を見通すような思考は生まれません。

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