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公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める

東洋経済オンライン / 2023年12月30日 7時20分

大川原化工機の大川原正明社長(中央)は判決を受けて「勝訴」と書かれた紙を掲げた(記者撮影)

起訴が違法――。そんな異例といえる司法判断が下された。

【大川原化工機事件「捏造」の構図】判決文には名前すら出てこないが、事件を指揮した張本人は宮園警部だった

軍事転用が可能な装置を不正に輸出したとして、横浜市にある「大川原化工機」の大川原正明社長ら幹部3人が逮捕・起訴され、初公判直前に起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件。東京地裁(桃崎剛裁判長)は12月27日、警視庁公安部と東京地検の捜査の違法性を認め、国と東京都に約1億6000万円の賠償を命じた。

大川原社長ら原告が求めていた賠償額は5億6000万円。日本の裁判では慰謝料が低く抑えられがちなことを勘案すれば、1億6000万円の賠償命令は「原告の全面勝訴」といっていい金額だ。

ところが原告代理人の高田剛弁護士(和田倉門法律事務所)は、判決に不満そうな表情をのぞかせ、判決後の記者会見で次のように述べた。

「手堅いが薄味」の判決

「警視庁公安部は経済産業省を説得するため、安積伸介警部補(肩書きは当時。以下同じ)らが防衛医科大学校の微生物学者・四ノ宮成祥教授ら4名の有識者から聴取した報告書を、公安部独自の法解釈の根拠として提出している。

だが、その報告書には有識者の供述と異なる内容が書かれていた。このことは、証拠として提出されている四ノ宮教授の陳述書から明らかであるし、私自身、四ノ宮教授を含む3名の有識者から確認をしている。つまり、経産省は嘘の有識者見解に基づき公安部の法解釈を受け入れたということだ。

しかし判決文では、公安部が経産省を説得する過程の事実についていっさい触れられなかった。公安部が経産省を説得する過程で何があったのかは、事件の深層にかかわる重要な事実であるが、事実認定してもらえなかった。判決は(公安部や東京地検の)捜査の明らかな違法を認定している点で手堅いものの、われわれからすると薄味な印象がある」

四ノ宮教授は2023年3月に東京地裁へ提出した陳述書に、「メモや報告書には私の考えと異なる点、私の意図から外れて曲解されている点、私が話していない点が散見され、驚いています」と書いている。

大川原化工機を立件したのは警視庁の公安部外事1課。捜査を指揮したのは宮園勇人警部だ。

「海外の“あるべきではないところ”で噴霧乾燥器が見つかった」。宮園警部による触れ込みの下、2017年に捜査チームが結成された。“あるべきではないところ”というのは、後からわかったことだが宮園警部の作り話である。

警視庁、経産省、検察は何を行ったのか

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