出口治明「お金を使うときのルールはひとつだけ」 貯める、殖やすより、使うほうがずっと大切だ
東洋経済オンライン / 2024年1月3日 17時0分
その年の世相を1字で表す「今年の漢字」が「税」に決まったり、開始間近と迫った新NISAが注目を浴びるなど、「お金」への興味関心が否応なしに高まっている昨今。しかし、正しいマネーリテラシーを身につけるのは容易ではありません。
例えば、お金はどのように使うべきかについて。いくら貯めても、あの世に持っていくことはできないわけで……私たちは、どのように貯めたお金を使うべきなのでしょうか?
ライフネット生命保険株式会社の創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学学長を務める出口治明さんの著書『働く君に伝えたい「お金」の教養』より一部抜粋してお届けします。
お金を「貯める」よりも「使う」ほうが大切
前回の記事では、「手取りでもらったお金を『財布』『投資』『預金』の3つに振り分ける」という、「財産三分法」についてお伝えしました。
ここからは、財産三分法で「財布」に入れたお金の「使い方」についてお話ししていきたいと思います。
じつは、僕は「貯める」や「殖やす」よりも、「使う」ことのほうがずっと大切だと思っています。なぜなら、お金を使うってすごく楽しいことだから。そして、使うことこそがお金の本質だから。ほしいものを手に入れたり、おいしいものを食べたり、すてきな音楽を聴いたり……。
そう、お金を使うときのルールはひとつだけ。「楽しいかどうか」です。楽しく、かつマイナスにならなければ、それでいいのです。
――待ってください、出口さん。バブル時代はそうだったかもしれませんが、いまの僕たちにとって、お金を使うのは、楽しさ半分、怖さ半分ですよ。「いい時代」を過ごしてきた上の世代の人とは感覚が違うんです。
「楽しく使う」と、「何も考えずに使う」とはまったく違います。バブル期のような「何も考えずに使う」は、優先順位をよく考えず、資金力にモノを言わせて、「ほしい」と思ったものを片っ端から買うような行為を指します。
「楽しく使う」には賢さが求められる
一方で「楽しく使う」ためには賢さが求められます。収入の範囲で、財産三分法のバランスをとりながら、自分が納得できるお金の使い方を「考え」なければならないからです。
そもそも、バブルや高度成長期の「いい時代」は基準になりません。戦後からバブル崩壊までのおよそ50年が、異常だったのです。冷静に考えて、経済成長率が7〜8%を超える時代が、長く続くはずがないでしょう。いま、日本はようやく普通の国になったといえます。それなのに、「昔はよかった」というおなじみのフレーズでみなさんを惑わせる困った人たちがいる。その困った人たちこそ、かつてのバブル期を20代から30代のときに経験した世代です。
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