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2024年・ロシアのプーチン大統領はどこへ行く? 米欧の「ルッソフォビア」に対抗、国家改造着手

東洋経済オンライン / 2024年1月13日 8時30分

2014年の一方的なクリミア併合を契機にした西側との関係悪化を受け、プーチン政権は、国際的孤立の原因はロシアの行動ではなく、もともとロシアを敵視している西側であると自らを正当化するために使い始めていた。侵攻開始の際にも使った言葉だ。

しかし最近、プーチン氏はこのルッソフォビア批判のボルテージをさらに一段と上げた。2023年11月末、「ルッソフォビアは、事実上、西側の公式イデオロギーになった」と宣言したのだ。

つまり、侵攻を機に形成された西側の対ロシア包囲網が一時的なものでなく、対ロ外交の長期的枠組みとして、ビルトインされた(組み込まれた)との認識を明確に初めて打ち出したのだ。

では、この「公式イデオロギー発言」にはどういう狙いがあったのか。筆者は以下のように解釈する。

東西冷戦時代は「資本主義体制VS社会主義体制」の2つの政治制度の競争であり、対決であった。それが現在は、ルッソフォビアこそ今後のロシアと西側との主要な対立軸であると、プーチン氏は言い切ったのだ。

ロシアがウクライナへの侵略国家であると西側から断罪されている中、ロシアはルッソフォビアの受難国であると説き、国民に団結と忍耐を訴えたのだ。

こうした受難論をベースに、プーチン氏は、2023年から新たな国づくりに踏み出した。代表的なのは、ルッソフォビアを初めて刑事罰の対象とする刑法改正の動きだ。

何をもって「ルッソフォビア」と規定するのか。まだ法律論議が続いているが、例えば、海外でのロシア国民に対する差別や、西側やウクライナを支持するような言動に禁錮5年の処罰を与えるような案が練られているようだ。

教育面でも、この受難論に沿った変化が進んでいる。ソ連時代のような、生徒への軍事教練が導入された。歴史の書き換えも進んでいる。

プーチン氏の指示を受け、高校生年代用に2023年秋に導入された全国統一教科書では、ルッソフォビアを初めて取り上げ、「西側のあからさまなルッソフォビアの狙いは、ロシアの解体である」と記した。

米欧との対立軸として「ルッソフォビア」

まるでソ連時代に敵だった「資本主義陣営」のような位置付けなのである。今やロシアも米欧も経済面では同じ資本主義国家であり、経済制度上の対立はない。プーチン氏としては、ロシアと西側の対立軸を象徴するキーワードとして、「ルッソフォビア」を使い始めたのだ。

だが、こうした司法面、教育面での制度変更は、まだ途中段階の措置のようだ。新たな国づくりの最終的到達地点として、プーチン氏が根本的な、歴史的国家改造に踏み出す可能性が出てきている。

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