2024年・ロシアのプーチン大統領はどこへ行く? 米欧の「ルッソフォビア」に対抗、国家改造着手
東洋経済オンライン / 2024年1月13日 8時30分
プーチン氏の側近であるロシア連邦捜査委員会のバストルイキン委員長が2023年11月22日、「国家イデオロギー」を制定する必要があると主張したのだ。同委員長は「国家イデオロギー」のあるべき具体的内容には言及しなかった。
しかし、興味深いのは、この発言が、ルッソフォビアが西側の「公式イデオロギー」になったとした先述のプーチン演説と時期的に相前後して行われたことだ。「西側の公式イデオロギー」と「ロシアの国家イデオロギー」が、踵を接して飛び出したのは偶然とは思えない。
「国家イデオロギー」と言えば、「共産党独裁」という国家の根本原則を掲げていたのが旧ソ連だ。ソ連憲法第6条で、これを規定していた。
だがこの規定はゴルバチョフ氏がペレストロイカ(改革)の目玉として、1990年2月7日に放棄を決めた。ソ連は1991年末に解体されたが、この日こそ、事実上「ソ連がソ連でなくなった日」であった。現ロシア憲法は「国家イデオロギー」の制定そのものを禁止し、今に至っている経緯がある。
バストルイキン氏は、この禁止規定を撤廃し、国家イデオロギーを復活させることを主張したのだ。この発言がプーチン氏の意向を反映したものであることは間違いないだろう。現在、クレムリン内で国家イデオロギー制定の是非や、制定の場合の内容について検討が進んでいるもようだ。
では、何が新たな国家イデオロギーとして、掲げられるのだろうか。共産党独裁の代わりに、プーチン政権が進める「独裁的権威主義政治」をさすがに国家の表看板として掲げるわけにはいかないだろう。
国家イデオロギーとしての「ルッソフォビア」
こう考えると、ルッソフォビアである西側への対抗姿勢が新たな「国家イデオロギー」として、何らかの形で盛り込まれる可能性はあると筆者はみる。
では、仮に「ロシアを敵視する西側への対抗」をうたう「国家イデオロギー」が制定されれば、何を意味するのか。
それは、「プーチン・ロシア」が「擬制の復活版ソ連」として、国際社会に登場してくることを意味する。かつての東西冷戦を想起させる対立構造をロシアが国際政治の場に持ち込んでくることになるだろう。
そういう事態になれば、ウクライナを舞台に展開されているロシアと米欧との対立関係は現在の地域的枠を超えて、いっそう広がることは必至だ。
すでに警戒すべき動きが起きている。2023年12月4日、プーチン氏がバルト3国で「ルッソフォビア的事象」が起きていると批判したのだ。
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