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2024年・ロシアのプーチン大統領はどこへ行く? 米欧の「ルッソフォビア」に対抗、国家改造着手

東洋経済オンライン / 2024年1月13日 8時30分

バルトでは各国政府と、旧ソ連時代から居住するロシア系住民との間でトラブルが続いている。プーチン氏は「海外に住むロシア人に対する差別には対抗措置を取る」とも言明した。

これまでプーチン氏はルッソフォビアについては、主にロシア国民向けに西側への警戒心、対抗心を煽るために使ってきたが、ここにきて外交面でも使い始めたのが不気味だ。このプーチン発言を受け、すでにNATO加盟国であるバルト諸国だけでなく、NATO全体に警戒心が広がっている。

プーチン氏はウクライナにとどまらず、かつての旧ソ連指導者のように欧州地図全体を見ているのだろう。今後、ウクライナ侵攻をめぐっては停戦に応じる動きに出る可能性は否定できない。

しかし、仮にそう動いたとしても、それは短期的な一時休止的な行動に過ぎないだろう。なぜなら、擬制的ながら、プーチン氏がはっきりと復活に向け動き始めた「ソ連」の主要な属性の1つが、西側との緩衝帯として、旧東欧衛星国家群を有していたことだからだ。

この21世紀に、かつての東欧諸国のような衛星国家を有するなど、時代錯誤の妄想としか筆者には思えないが、プーチン氏は大真面目なのだ。それを裏付ける動きが実は侵攻前からあった。

ヤルタ首脳会議の再現を狙ったプーチン

プーチン氏は2019年頃から、米英中仏の他の国連安保理常任理事国に対し、欧州秩序に関する会議を開催するよう打診していた。これは、第2次大戦末期の1945年2月に開催され、欧州における東西勢力圏を確定したヤルタ首脳会議の再現を狙ったもので、「ヤルタ2」構想と呼ばれていた。

プーチン氏からすれば、西側から批判されたクリミア併合などを新たな欧州秩序として国際的に受け入れさせ、ウクライナ全体をロシアの勢力圏として認知させることを狙ったものだ。

この時、プーチン氏の頭の中ではウクライナだけでなく、バルト3国なども勢力圏としてにらんでいたのかもしれない。しかし、この時代に、勢力圏の復活には米欧は冷淡で、「ヤルタ2」構想はまったく相手にされなかった。

ここまで述べてきたプーチン氏の世界観を踏まえ、2024年、西側はプーチン・ロシアとどう向き合うべきなのか。

近い将来における「擬制の復活版ソ連」の登場というシナリオに対し、現実感をもって備えるべきだ。もはやウクライナ紛争は単なる地域紛争ではなくなっている。憲法で「平和主義」を掲げる日本も、その枠を守りつつ西側の一員として今後対応していかなければならない。

その意味で、2024年1月初めにキーウに入った上川陽子外相のウクライナ電撃訪問は高く評価できる。

ウクライナへの国際的支援の息切れが懸念される中、ウクライナに対無人航空機検知システムを供与するための資金供与を表明したことは、日本国内で見ている以上に「あの日本が」と国際的インパクトが大きかった。国際的支援再拡充の動きに一定の弾みを与えた。

プーチン氏は2024年3月半ばに大統領選を迎える。国民の支持率は依然として70%の水準を保っている。

反政権派の立候補希望者の出馬を排除するなど、クレムリンが選挙をがっちり管理しており、5選を果たすのは間違いない。選挙戦の過程で上記した「ルッソフォビア」や「国家イデオロギー」に言及するかが注目される。

吉田 成之:新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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