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生成AIが広げる「少数の一流」と「それ以外」の格差 「2:8の法則」の「8」にあたる仕事が減る

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 15時0分

ただ、プロのクリエイターにとっての問題点は、AIの性能がこの先もずっとこの程度ではないというところにあります。ファイアフライのAIは大量の画像を読み込んで常に学習を重ねていますから、その作画性能は日々進化しています。今は人間のクリエイターの方が優れていたとしても、3カ月後、1年後にはどちらの方が優れているのかはわからないのです。

「でもプロのイラストレーターや写真家はファイアフライに学習用の作品を提供することで使用料を得られるはずだよね」

はい。それは間違いではありません。確かにアドビでは、AIに学習させるためのイラストや写真として著作物は使わず、あくまで学習用の素材は有償で集めてファイアフライを完成させていくと表明しています。ただ、その報酬額は現状では非公開です。

しかし、そのようなAIの学習用素材に対して支払われるイラストの使用料の方が、イラストの販売価格よりも高くなるとすれば、ファイアフライの提供するイラストの使用料はこれまでのクリエイターが自身で作ったイラストの使用料よりも高くなるはずです。

実際は逆で、あれだけ安くイラストが提供されているのですから、ファイアフライの裏側で儲けることができるクリエイターはごく一部になるはずです。

先ほどAIが生成した絵画や写真が最優秀賞をとった話をしました。この点について補足しておくと、生成AIには創造性がありません。模倣しかできないツールがなぜ最優秀賞をとれたのでしょうか?

実は、写真コンテストで最優秀賞を受賞したAI作品を作ったのは、世界的な写真家だったのです。

一流はAIでよりハイレベルの仕事ができる

つまり生成AIを一流のアーティストが使えば、普通のイラストレーターや写真家よりもいい指示が出せるので、完成度の高い絵画や写真が創りだせるのです。

こうして生成AIは、才能のある人材が生み出すアートを、今までよりレベルの高いものへと変えていくことでしょう。一方で、並の才能が生み出すアートはAIの創りだす模倣品を超えることはできません。これが、私がこれからクリエイター業界で起きると予想していることです。

結論から言えば、平凡なイラストレーターや人並の写真家という仕事は、生成AIの出現で一気に消滅の危機が早まってしまったのです。

このような仕事消滅の危機に関して、日本人はあまり真剣に捉えていないのかもしれません。2023年、ハリウッドでは生成AI規制を求めて長期間にわたる大規模なストライキが起きました。なかでも俳優と脚本家の抱える問題は深刻です。

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