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生成AIが広げる「少数の一流」と「それ以外」の格差 「2:8の法則」の「8」にあたる仕事が減る

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 15時0分

たとえば、生成AIが学習するための演技素材としての仕事が、非常に安い賃金で募集されています。俳優がカメラの前で求められた演技をすると、それが生成AIの学習データになるのです。表情、身振り手振り、アクションといった一度きりの演技が、その後何度でも使える生成AI用の学習情報として蓄積されるのですが、その賃金が映画の出演料よりも安くなっているのです。

また、脚本家の状況も深刻です。映画には過去100年の歴史があり、脚本家は過去の名作を学習することでよりよい脚本を生み出そうと努力しています。

AIに仕事を奪われそうになったら?

ところが生成AIは、人間の脚本家よりもその学習スピードがはるかに速いわけです。まったく新しいコンセプトのストーリーではない映画やテレビドラマの脚本を考えるのであれば、生成AIは人間の脚本家の強大な敵になります。

たとえば、生成AIにこのような指示をするとします。

「映画『タイタニック』をウクライナ紛争に置き換えて脚本を生成しなさい。キーワードは“結ばれない相手との情熱的な恋”で、“突然起きた命の危機”に巻き込まれながらも、最後には“悲劇的なクライマックス”が待っている、そんな脚本にしてほしい」

というように、何度かチャットを繰り返しながらコンセプトを入力していくと、新奇性には欠けるものの、ある程度売れそうな映画脚本の骨格が数時間で作れるでしょう。

このように、一番の骨格となる部分を過去のヒット作を模倣する形でAIに作らせて、細部は駆け出しの若手作家に格安の報酬で依頼するような脚本づくりが常態化してしまったら、映画業界はどうなるのでしょうか? ですから脚本家の組合はいち早く動き、プロデューサーに対して脚本にAIを使わないように要求したのです。

日本ではイラストレーターの世界で同様の問題が起きています。生成AIに萌え画を学習させれば、ゲームの新キャラも、新しい漫画作品の主要人物も簡単に生成できます。一瞬で数万種類のゲームキャラを生成することだって可能です。

あらゆる表現者の分野で仕事が消滅

ただ、日本人はこのような問題に対して、誰にどう抗議すればいいのかわかっていません。インターネットが出現したときは旅行会社の数が減ったり、大手証券会社の社員が減ると予測されていました。そして10年経ってみると実際にそうなりました。

音楽のサブスクが始まったときも、CDの売れ行きは大幅に下がっていくと予測されていました。実際そのとおりになって、古いやり方を続けていた音楽アーティストたちは、どうやって生計を維持すればいいのかまったくわからなくなりました。

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