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生成AIが広げる「少数の一流」と「それ以外」の格差 「2:8の法則」の「8」にあたる仕事が減る

東洋経済オンライン / 2024年1月17日 15時0分

これと同じことが、2020年代後半から2030年代前半にかけて、あらゆるクリエイター、あらゆる表現者の分野で起きていきます。クリエイターとしての職業はなくならないかもしれません(なくならない可能性は高いでしょう)が、どう考えてみてもイラストレーターも、写真家も、脚本家も、役者も、かなりまとまった量の仕事が消滅することは素人でも予測できます。

世の中には「パレートの法則」というものがあります。「2:8の法則」とも呼ばれていて、どのような分野においても特定の2割の要素が、8割の結果を生み出しているという意味の法則です。

たとえば、店内に5000アイテムが並んでいる小売店で2割に相当する1000アイテムが、お店の売上の8割を占めているとか、上位2割の常連客が、延べ来店客数の8割を占めているなどといった事例が挙げられます。

マクロ経済から考える仕事消滅

もちろんこれは経験則なので、ちゃんと調べてみると3:7だったとか1:9だったとか細部はさまざまでしょう。

富裕層であれば、上位10%が世界の8割近い富を、上位1%がそのうちの4割を占めていると言われています。富裕層は上位集中が顕著に表れているジャンルの1つですが、同様に映画俳優にしても、小説家にしても、音楽アーティストにしても、上位集中が際立つ仕事では10%のクリエイターが8~9割の利益を生んでいるほどです。

では人工知能がクリエイターの仕事を奪い始めた場合、仕事が減ってしまうのはどちらでしょうか? 人気俳優と駆け出し俳優、人気作家と名もなきライター、売れっ子漫画家と同人誌作家─すべてのジャンルにおいて、仕事が減るのは後者です。

これはホワイトカラーの仕事においても同様です。有能で評判が高く、売れっ子の会計士には大企業からたくさんの仕事が舞い込んできますが、まだ駆け出しの会計士の仕事は徐々にAIに奪われてしまうでしょう。

また、能力の高い営業はAIを武器に、より多くの契約を結ぶことができるかもしれませんが、さほど能力が高くない営業はAIの波にのまれてしまうかもしれません。大企業のオフィスでも給与の高いビジネスパーソンと非正規の事務職を比較してみると、仕事が減るのは明らかに後者となるでしょう。

「2:8の法則」に倣ってみると、後ろの8にあたる人たちの仕事の方が、AIによる仕事消滅の悪影響をもろに被(こうむ)ることになるわけです。

次に挙げる未来予測を例に、もう少し具体的に想像してみましょう。

「この先、AIによって世の中の業務やタスクの3割が消滅するだろう」

ざっくり言えばこれが、現時点で大多数の人たちが予測している未来です。では、この消滅する仕事は主に誰が担当しているのでしょうか? 2:8の法則で言えば、8の人たちが担当する仕事が消えていくはずです。というのも、多くの価値を生む仕事をしている2の人たちは、アシスタント的な仕事をすでに8の人たちに外注しているからです。

そう考えると2:8の仕事のうち8の仕事はいずれ5に減って、その5に減った仕事を8の人たちが取り合う計算になります。あくまで単純計算ですが、数字上は2割の売れっ子と5割の普通の人、そして3割の仕事を失う人が誕生します。AIによって世界は2:8の法則から2:5:3の法則へと移行するのです。

鈴木 貴博:経済評論家、百年コンサルティング代表

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