50年前、無名の土地がシリコンバレーになった背景 夜8時半以降は夕食を食べるところがなかった
東洋経済オンライン / 2024年1月18日 11時0分
シリコンバレーが一般的に意識されるようになった最初の瞬間から、それは革命的で反エスタブリッシュメント的な比喩まみれとなっていた。「自分だけの革命を始めよう――パーソナルコンピュータで」というのが、新生の1978年『パーソナルコンピューティング』誌の広告だった。「パーソナルコンピュータは、わが大陸が人類文明に対して行った最大の貢献であるアメリカ革命のあの遺物――起業家というものにとっての最後のチャンスなのだ」とハイテク業界紙『インフォワールド』は1980年に宣言した。
その4年後、アップル社が新商品マッキントッシュ・コンピュータを世に問う準備を行う中で、同社の重役たちは「この製品の過激で革命的な性格」を強調した。その一つの結果が、史上最も名高いテレビ広告の一つだ。1984年スーパーボウルの間に何百万ものアメリカのリビングルームに、口をあんぐりさせるようなCMが放送されたのだ。精悍な若い女性が、物憂げな観客の間を走って、青い画面に投影されたビッグブラザーめいた映像にハンマーを投げつけて、それを粉砕するのだ。
これはきわめて露骨に、アップルの主要なライバルたるIBMに対するパンチとなっていたが、同時にマーケティング契約や広告スローガンを超えた、ハイテクおたくに流れるもっと広範な反エスタブリッシュメント感情を反映するものだった。
ジャーナリストのスティーブン・レヴィーが1984年に、コンピュータをパーソナルなものにするのに貢献したハードウェアやソフトウェアの技術おたくたちが作り上げる驚異的な新しいサブカルチャーを著すのに使った、「ハッカー倫理」なるものの1つの支柱は「権威を信用するな――分散化を促進せよ」というものだった。「権威」というのは、ビッグブルーことIBM、大企業、大きな政府のことだ。
これは当時として完璧なメッセージだった。10年以上も一貫して暗いビジネスニュース――工場閉鎖、ブルーカラー職が海外に奪われ、企業リーダーたちは不手際ばかり、アメリカのブランドは外国の競争に次々に敗れる――が続いたあとでハイテク企業はまばゆい、有望なコントラストを示していた。
くたびれた中間管理職や仏頂面の保守派とはちがって、タンデムコンピュータのジェームズ「ジミー・T」トレイビッグのように社員のために毎週ビール宴会を開いたり、会社のプールサイドで、アルフレスコ記者会見を開いたりする派手な重役がいた。
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