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生成AI時代に注目される「古代ギリシャの美徳」 リスクを避けAIを正しく使う「人類の英知」

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 9時0分

「思慮」「勇気」「節制」「正義」。この4つの徳目に生成AI時代を生きるヒントがある(写真:scaliger/PIXTA)

ChatGPTをはじめとする生成AIは、この1年ほどでビジネスで日常的に使われるツールとして定着しつつある。しかし一方で、フェイクニュースの問題や著作権の問題など、利用に際してはさまざまなリスクも内包している。そして今、こうしたリスクとうまくつきあい、適切にAIを活用するための指針として、古代ギリシャの4つの徳目が注目されている。『生成AI時代の「超」仕事術大全』(東洋経済新報社)の著者の1人である保科学世氏が、生成AI時代に現代人があらためて心に刻みたい4つの徳目について解説する。

26倍に増加したAIの事件や論争

AIAAIC(AI, Algorithmic, and Automation Incidents and Controversies)レポジトリは、AIやアルゴリズム、自動化に起因または関連する最近のインシデントを、独立かつオープンに公開しているデータセットである。

【図表】AIに関するインシデントと論争の数(2012~2021年)

2019年に開始された同プロジェクトは、AIにまつわるレピュテーションリスクをよりよく理解するためのプライベートプロジェクトとして発足し、AI関連の倫理的問題を追跡する包括的な取り組みにまで発展している。

このAIAAICのデータベースで報告されたAIの事件や論争の数は、2021年には2012年の26倍となっている。報告件数の増加は、AIの利用拡大とそれに伴う倫理的問題への意識の高まりによるものと思われるが、生成AIの利用が進めばこの件数も増加していくと予想される。

このような状況の中で生成AIを最大限正しく活用するためには、リスクに留意し、その軽減策を行いながら、倫理観と節度をもって取り組んでいく必要がある。そこで本稿では、これから求められる4つの「徳」について触れたいと思う。

モントリオールAI倫理研究所が2020年10月に公表したレポート「The State of AI Ethics Report(October 2020)」には、古代ギリシャ以来西洋において中心的となっている徳目、「枢要徳」について触れられている。生成AIの文脈に照らし合わせて、この4つの徳目について見ていこう。

思慮(Prudence)

1つ目の徳は思慮(Prudence)である。生成AIの利活用における思慮深さとは、生成AIの影響とその限界を正しく理解し、従来の方法ではなくAIを使って問題を解決する、あるいはAIによって問題を解決することの機会費用(最大利益を生む選択肢とそれ以外の選択肢との利益の差)を評価できるということである。生成AIは多目的に使える汎用AIのため、これまでできなかったことを可能にするポテンシャルを秘めている。しかし多くのリスクも存在しているのが現状である。何ができて、何ができないのか、どんなリスクがあって何をしてはいけないのか、を理解し正しく使う「思慮深さ」が必要だ。

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