中越パルプ工業、「夢の新素材」を開発強化する訳 「セルロースナノファイバー」で農業領域を開拓
東洋経済オンライン / 2024年1月18日 7時50分
国内の製紙会社を取り巻く経営環境は厳しい。印刷・新聞用紙や衛生用紙、包装用紙など、紙全体の国内生産量は、2012年の1506万トンから2022年の1127万トンへと大きく減少している。
【写真】スニーカーの靴底や化粧品などに使われるセルロースナノファイバー配合の商品
デジタル化やペーパーレス化の進展により紙需要が減り続けていることに加えて、コロナ禍によるイベント関連や販促物の印刷量減少も追い打ちをかけた。
こうした中、製紙各社にとって、紙やパルプの生産に代わる新たな収益源の確保は喫緊の課題となっている。
環境負荷が少ない、軽くて高強度の新素材
国内の紙・パルプ製造で業界7位(2022年度売上高)の中越パルプ工業(本社:富山県高岡市)は、木質由来の新素材であるセルロースナノファイバー(CNF)に着目し、その製造や販売を強化している。
CNFとは、木の主成分であるセルロースをナノ(1ミリの100万分の1)単位にまで、細かく解きほぐした繊維(ファイバー)のこと。鉄鋼の1/5の軽さで、鉄鋼の5倍以上の強度を持つ「夢の新素材」と言われる。
植物由来であるため環境負荷が少ない、持続可能な資源としても注目を集めている。
紙の原料であるパルプから取り出されることから、製紙各社は木材チップをパルプ化する技術や設備を生かしたCNFの開発に強みを持つ。
中でも中越パルプ工業は国内でCNFの最大生産能力で2位を誇り、国内ではあまり見られない農業用途での活用や、竹を原材料とするなど、他社と差別化した取り組みで注目を集めている。
植物の物理的な防除資材として活用
CNFが製紙会社の新たな収益源として期待されているのは、CNFを材料に混ぜたり、樹脂などと複合して活用したりすることで、さまざまな特性を発揮するからだ。
その特性はCNFを作る時の原料(針葉樹なのか広葉樹なのか)、添加する化学薬品、製造方法などによって異なり、それぞれの特性を生かして、さまざまな用途への適用が始まっている。
例えば樹脂とCNFを混ぜた複合材では、軽量で高強度の特性を生かして、自動車など輸送機器のボディや家電製品などへの採用例がある。
また、保水性や増粘性(ねばり気を高める性質)、チキソトロピー性(力を加えることで硬さが変化する性質)などを生かして、食品や化粧品の添加剤としての活用も徐々に進んできている。
中越パルプ工業が現在、注力しているのが農業分野での活用だ。
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