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中越パルプ工業、「夢の新素材」を開発強化する訳 「セルロースナノファイバー」で農業領域を開拓

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 7時50分

農業では、野菜や果実の栽培時に病原菌が侵入し、生育が阻害されるという大きな課題がある。農薬など科学的に除菌する方法もあるが、衛生面・環境面からも化学農薬の使用量の削減は避けては通れない。

こうした中、中越パルプ工業が開発したCNFを植物に散布すれば、病原菌の侵入を物理的に防ぐという効果が、同社と筑波大学、丸紅との共同研究から判明。防除資材としての普及に力を入れるきっかけとなった。

なぜ同社が開発したCNFが防除資材として効果を発揮できるのか。

同社によるとその理由は、CNFの製造方法にあるという。一般にパルプからCNFを取り出すときは化学薬品などを加えることが多い。だが、同社は化学薬品を使わずに、水の力を用いて木質繊維などを取きほぐす「水中対向衝突法(ACC法)」という手法で製造している。

ACC法で生産されたCNFは、「水と結びつきやすい親水性と、油と結びつきやすい疎水性という両方の性質を持っている」(ナノフォレスト事業部長兼東京営業所長の伊東慶郎氏)。

この「両親媒性」によって、「水をはじく葉面にも付着しやすい」「付着したCNFが葉面を親水性にして、病原菌に葉面だと認識させにくくする」という2つの効果が発揮され、病原菌の侵入を防ぐという。

さらに、同社は紙・パルプメーカーとして、針葉樹などの樹木だけでなく、国内産の竹を多く使っていることでもよく知られている。この竹を原料として生成したCNFはとくに両親媒性が高く、この強みを打ち出していく戦略だ。

農水省の認定が農業現場への普及・拡大に

国の動きも同社の取り組みを後押しする。

中越パルプ工業と丸紅のCNFを用いた新たな防除資材への取り組みが、2050年までの持続可能な食料システムの構築へ農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」の基盤確立事業として、2023年9月に認定を受けたのだ。

ここでは、2050年までに化学農薬の使用量を50%削減することが目標に掲げられており、CNFの農業現場への普及・拡大を見据えた実証実験の拡大と、販路の開拓の後押しになると見られる。

農水省の認定により、CNFを活用する農業法人など生産者は、日本政策金融公庫による無利子・低利での融資や、税制特例を受けられるという。伊東氏は、「これまでCNFの認知度は高くなかったが、今回農水省の認定を受けたことで農家などの関心は高まる」と期待を寄せる。

「殺虫殺菌剤など農薬市場は年間の出荷額で約730億円の規模があり、1%をCNFに置き換えてもらうだけで7億円の売上高となる。普及拡大に期待したい」(伊東氏)

CNFの設備としては国内2位の規模

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