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中越パルプ工業、「夢の新素材」を開発強化する訳 「セルロースナノファイバー」で農業領域を開拓

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 7時50分

同社は2017年1月に、CNFの生産・販売を担う組織として、開発本部内にナノフォレスト事業部を設立。同年6月から川内工場(鹿児島県薩摩川内市)に約12億円を投じたCNFの生産設備を稼働させている。

最大生産能力は年間100トンで、大手製紙会社の日本製紙・石巻工場の年間500トンに次いで、国内では大王製紙・三島工場と並ぶ、2番目の規模だ。

同社はその川内工場で、水と混ぜたCNFや粉末にしたCNFなど用途に応じた複数の製品を、同社の独自製法であるACC法によって生産している。

生産したCNFはこれまでに、スピーカーの振動板やヘッドホン、卓球のラケットやスニーカーの靴底、琴柱(ことじ=琴の胴に立てて絃を支える柱)、化粧品などの用途で使われている。

さらに、本社がある高岡工場では、より高機能なCNFの生産に向けて、パイロットプラントの稼働準備が進められている。現在は設備の検証テストを実施中で、川内工場との2拠点体制で需要増に備える。

ただこれは同社に限った話ではないが、国内のCNFの生産設備のキャパシティに対して、実際の出荷数量は大きく見劣りしている。

2021年3月に発表された環境省の資料などによると、国内の製紙会社や化学・繊維メーカーなどが有するCNF製造プラントの最大生産能力合計は約1000トンだ。

しかし、2023年4月に発表した矢野経済研究所の調査によると、2023年のCNFの世界生産量(試作やサンプル供給分含む)は前年比6.3%増の85トンに過ぎない。

CNFの世界での生産量は2017年以降、右肩上がりで伸びているが、国内の最大生産量にさえも遠く及ばない。

高コストが普及拡大を阻む壁

CNFはパルプを細かく解きほぐす処理や脱水・乾燥工程の複雑さ、化学薬品の使用や輸送コストなどによって、販売価格は1キロ当たり数万円になることもある。この価格が普及拡大を阻む大きな要因とされている。

ただ、大量に消費される商品への導入が決まり、量産化に弾みがつけば、スケールメリットから価格も下がると見られる。

CNFについては国内の製紙・化学メーカーはもとより、世界中の研究機関などが製造方法や原材料、用途などの研究開発を進めている。経済産業省は2030年にCNF関連市場を1兆円規模に育てる目標を掲げる。

課題の1つであった用途が広がることで、今後大きく市場が拡大する可能性を秘めている。

高見 和也:東洋経済 記者

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