能登半島地震、医師が感嘆「移動薬局車」の活躍 災害医療に不可欠、能登地震では延べ7台稼働
東洋経済オンライン / 2024年1月18日 7時0分
医療チームは災害の初期救急に必要な医薬品は持参しているが、それにも限りがある。糖尿病など慢性疾患に必要な治療薬も少ない。
避難所を回っていると、慢性疾患薬が切れそうな人が多く、みんな不安を抱えている。風邪に効くPL錠も底をついている。だが、それら不足する医薬品を入手するルートができていない。
災害医療の現場では、医薬品は命をつなぐ大切なツールだ。数々の災害現場を歩いてきた渡邉氏は、すぐに石川県薬剤師会と連絡を取った。
「医薬品の集積と薬剤師の派遣が必要です」
岐阜県薬剤師会のMPが金沢市に到着したのは1月7日早朝だ。筆者は、このMPの後を追いかける形で被災地に向かった。午前7時過ぎに出発したMPは、通行止めの主要道路を迂回しながら約5時間半かけて珠洲市の健康増進センターに到着した。
熊本地震やその後の水害では、医療拠点となった施設にMPを固定したが、今回はどう運用するか。
MPが珠洲市に到着した翌朝、調整役も兼ねていた渡邉氏から指示が出た。すでに現地入りしていたピースウインズ・ジャパン(PWJ)の一事業である「空飛ぶ捜索医療団ARROWS」から派遣されている山田太平医師(兵庫医科大学准教授)の医療チームに帯同して避難所を回ってほしいという。
MPの薬剤師は岐阜薬科大学の林秀樹教授に同大学の小池紫氏、それにウエルシアホールディングス東海支社の生木庸寛氏(薬剤師)ら3人だ。3人が乗り込んだMPが医療チームの後をついていく。MPにとっては初めての巡回になる。
医師と薬剤師、息の合った連携
まずは避難所になっている県立飯田高校だ。臨時の診療所となった保健室で、医師の隣に看護師が控え、机の向かいに生木氏が災害処方箋を手に陣取る。廊下には医師が来ていることを知った被災者が10人以上も並んだ。
建物の倒壊から逃げるときに左足の指をけがしたという50代の女性が患部を見せる。「まずは消毒しておきましょうね」と山田医師。「何かお薬は」と問うと、薬剤師の生木氏が「ゲンタシン軟膏あります」と応じる。これは化膿止めの薬だ。
山田医師はすぐさま「すばらしい」。ゲンタシン軟膏は山田医師たちも持っているが、残り少なくなっているから助かるというのだ。
生木氏は処方箋に薬剤名を書き込み、それを山田医師に見せて確認して署名してもらう。それを自分のスマホで写真を撮って玄関口に横付けされたMPに送る。林教授と小池氏が調剤し、診察を終えて廊下で待つ患者に届けて服薬指導をする。そんな流れがすぐにできあがった。
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