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能登半島地震、医師が感嘆「移動薬局車」の活躍 災害医療に不可欠、能登地震では延べ7台稼働

東洋経済オンライン / 2024年1月18日 7時0分

のどが痛くて声がかすれ鼻水が出る女性。山田医師が「カルボシステインはありますか」と尋ねる。気管支の炎症などの症状を和らげる薬だ。生木氏は「ありませんが、ムコソルバンならあります」と応じる。

山田医師は生木氏の目を見つめて笑った。「究極のシステムですねえ」。
手元にはない医薬品の代わりに、すぐに同効医薬品を提案できる薬剤師とのコラボへの感嘆の言葉だ。

飯田高校では15人を診た後、午後からは医師が訪れるのは初めてという2つの小学校で、それぞれ13人、6人を診た。

次々と投入されるMP、薬剤師ならではのアドバイス

3カ所目の市立正院小学校では、右足がパンパンに膨れ上がった年配の男性が杖をつきながらやってきた。震災で負った傷が化膿してしまったのだ。

山田医師は翌朝に市総合病院への受診の手配をして抗生物質を処方する。MPで調剤した小池氏が、避難所に常駐している看護師に、「4時間を置いて今日中に2錠飲んだほうがいいかもしれません」と医薬品のプロならではのアドバイスをする。

林教授は、当初MPに170品目を搭載する予定で準備していたが、実際には日本薬剤師会の指示で63品目になった。急性期の医薬品に絞る必要があったためだ。ところが現場に入ると、患者の多くは慢性期の薬を求めている。急性期の薬と慢性期の薬。MPでどこまで対応すべきか、模索は続く。

岐阜県、横浜市、三重県、和歌山県、広島県、静岡県の薬剤師会の6台も次々と能登半島に入っている。MPのパイオニアである宮城県薬剤師会のMPが能登町に向かったのは1月10日だ。開発以来、MP運用の中心となってきた高橋文章理事と、東日本大震災時に宮城県気仙沼市で離島に薬剤を運び込み、臨時調剤室をつくるなど奮闘した経験を持つ武田雄高・気仙沼薬剤師会長の2人だ。

2人と旧知の間柄である筆者は、金沢で合流して能登町まで車で追いかけさせてもらった。2人には別の任務が課せられていた。翌日、能登町に入る横浜市薬剤師会のMPの調整役と、能登町に2台のMPが必要かの判断だ。

すでに町内にある薬局のうち数カ所は被災しながらも営業を始めていた。市の中心部にある公立宇出津病院も混乱のなかで診療を続けている。
「引き上げることも念頭に考えます」と高橋氏。

その言葉を聞いて、MPの生みの親である山田常務理事の話を思い出した。「MPの任務は現場の薬局が立ち上がるまでの間のつなぎなんです。支援の仕方によっては、復興の妨げになってしまう」。

難しい「引き上げ」の判断

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