ドイツ「最大のタブー」を揺るがすイスラエル攻撃 ユダヤ人とイスラムの団体がそれぞれ語る懸念
東洋経済オンライン / 2024年1月19日 8時30分
「ジハードはユダヤ人だけが対象なのではない。日本人、世界全体も対象にしている。ハマスの元指導者の一人は、『シャリア法(イスラム法)により世界は統治され、ユダヤ教徒、キリスト教徒がいない世界が生まれる。イスラエルは最初の一歩に過ぎない』と発言した。それがジハードの考え方だ」と話す。
ボトマン氏とラハフ氏に共通するのは、イスラエルが西側世界と同じ価値を共有し、ハマスなどの自由の価値を否定する勢力と戦わねばならないという考え方だ。イスラエルが西側世界に連帯、支援を訴える論拠ということもできるだろう。
イスラム・パレスチナ団体代表が語ったこと
ドイツ国内では、テロ攻撃発生直後、それを歓迎するデモも公然と行われた反面、テロを非難し、イスラエルへの連帯を訴える世論も強かった。
政治の主流は、ナチ・ドイツの歴史を教訓にイスラエルとの特別な関係を維持する姿勢を保っている。アンゲラ・メルケル前首相の「イスラエルの安全は、ドイツの国家理性(国家としての良識)」という、ドイツ国内では有名な言葉はその後もしばしば引用される。
しかし、イスラエル軍によるハマス掃討作戦が進むにつれて、ガザの民間人の犠牲者も増え、イスラエルへの批判が高まっている。もともとドイツの左派に強い反イスラエル、親パレスチナ世論も次第に力を得てきた。
ユダヤ人団体に話を聞いた同じ時期、「イスラム教徒中央評議会」のアイマン・マツエク議長(54歳)、「パレスチナ人中央評議会」のタイヤ―・ハッジョ議長(63歳)に話を聞いたが、両人はイスラエルだけでなく、ドイツ政府も批判の対象とした。
ユダヤ系も、イスラム教徒やアラブ系の組織も、どちらも原理主義者からドイツ社会との共存を目指す穏健派まで幅広い。私がベルリンで話を聞いたイスラム、アラブ系組織の両議長の見解は、比較的穏健の立場を代弁している。
イスラム教徒中央評議会は、イスラム教団体としては初めて、アウシュヴィッツを訪問し、国内外で他宗教との対話を行ってきた、という。
議長のマツエク氏は、ドイツ西部アーヘン生まれ。父はシリア人、母はドイツ人。カイロでアラビア語、イスラム学、アーヘンで政治学を学んだ。1984年に発足した中央評議会に、ほぼ最初から関わってきた。2011年から議長を務めている。
マツエク氏は、「ハマスは過激主義組織であり、パレスチナ解放をその過激主義の正当化に使っている。ハマスもイスラエルの過激主義者も和平プロセスには興味がない。イツハク・ラビン元イスラエル首相の暗殺(1995年)は極右ユダヤ人によるものだった」と双方の過激主義に対して距離を置く姿勢を示す。
「ハマスはパレスチナの代表者ではない」
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