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早大野球部OB会"子どもに外遊びの場提供"の背景 運営への協力は「人生の豊かさにつながる」

東洋経済オンライン / 2024年1月20日 8時0分

そこで、部を通して将来の野球界に少しでも貢献できればと、子どもたちが野球に興味を持つきっかけとして同部グラウンドを開放し、前述のならびっこゲームや、ボール投げ計測などを行うイベントを企画した。

2015年から毎年行われてきた本イベントだったが、2020年と2021年はコロナ禍で開催できなかった。一昨年(2022年)、コロナ禍の収束により再び開催できることになり、OB有志が集まりイベントの内容を練っていた際、メンバーのひとりが「何か違う」と一石を投じたという。

「コロナ禍を経て、子どもたちはそもそも外で遊べていないのではという話になったんです。調べてみると、コロナの感染拡大を機に子どもたちの体力は落ち、肥満が増加したというスポーツ庁のデータが出てきた」(大渕氏)

さらに調べると、体力低下や肥満増加だけでなく、塾や習い事で放課後のスケジュールが埋まっている子どもが多いことや、ボール遊びができない公園が多いこともわかった。

「野球に興味を持ってもらう前に、外遊びの機会を子どもたちに提供しなければ」と考えた大渕氏らは、子どもたちに親しみのある「鬼ごっこ」に着目し、鬼ごっこ協会と連携。野球をイメージした「ダイヤ鬼」を開発し、イベントで行うことにした。

そして昨年(2023年)12月、同部の小宮山悟監督の呼びかけにより、部のグラウンドを遊び場として開放する試みは東京六大学全てに広まった。六大学全ての参加者を合わせると、480人にものぼったそうだ。

大渕氏は、今後のイベントの展開について「学校施設、特に大学には良いグラウンドがある。このような取り組みが全国の野球部のグラウンドに広がれば。また、アメフトやラグビーなど他競技にも取り組みが広がると、スポーツが子どもたちにとって、さらに身近になるのでは」と話す。

企画・運営する原動力は何か

冒頭のイベントには、30人あまりの同部OBがボランティアで参加した。司会進行や子どもたちの見守りはもちろん、チラシ作成などの広報も全てボランティアで行われている。

大渕氏はじめ、参加したOBのほとんどは現役世代だ。多忙な仕事の合間を縫ってまで活動を続ける原動力とは、一体何なのだろうか。

「子どもたちから『楽しかった』と言ってもらえるのが、何よりうれしい。イベントを通じて子どもたちの笑顔を見ることが、部への恩返しだけでなく、われわれの人生の豊かさにもつながっている」(大渕氏)

外遊びの機会が減り、スポーツは子どもたちにとって習い事として行うのが主流になりつつある。そんななか、早大野球部のOB会は「子どもたちの日常において、スポーツをもっと身近にしたい」と今後も活動を続ける。今年(2024年)の春秋にも、グラウンド開放を行う予定だ。

一方で私たちも、誰もが何らかの団体や人と関わりを持っている。関わり合う人が力や知恵を出し合えば、誰かの暮らしや社会がよりよくなるきっかけを作ることができるのかもしれない。

笠井 ゆかり:フリーライター

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