「ゴミ屋敷のくぼみに寝る」母親が救われた瞬間 息子の依頼で家が片付けられ新生活が始まる
東洋経済オンライン / 2024年1月20日 12時0分
「母の家がゴミ屋敷になっている。助けてほしい」
そうSOSを出したのは関西地方のとある施設に入所する男性だった。助けを求められた施設の職員が男性の実家を訪れてみると、部屋の荒れ具合は想像をはるかに超えていた。何百匹というゴキブリが家中を這い回っていたのだ。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)が、男性の母親が一人で暮らす家へ片付けに向かった。なぜ、母親の家はゴミ屋敷と化してしまったのか。
すべての部屋が生ゴミだらけ
「自分たちにできることがあれば」
男性が入所する施設の職員がそう思いながら部屋のドアを開けると、玄関、キッチン、トイレ、風呂場、リビング、2つの和室、すべての部屋がゴミでいっぱいになっていた。床が見える場所はほとんどない。
目につくのは、空の食品容器、空き缶、ペットボトルなどの生活ゴミだ。ゴミ袋にまとめられることもないまま、ゴミの山がいくつもできている。壁際にいたっては、そのゴミ山は天井まで届くほどだ。とくにキッチンとリビングには生ゴミが密集しており、食べ物の腐った臭いが鼻をつく。ゴミの上を歩いて進んでいくと、1カ所だけ足元が安定する場所があった。その下にはテーブルが埋まっていた。
「従業員を何人か集めたところで、自分たちの手に負える範囲ではない」
そう悟った職員は、イーブイに片付けの依頼をしたのだった。
約30年前、息子が生まれたことをきっかけに家族3人でこの家に暮らし始めた。しかし、約15年前に父親が他界。そのショックと、もともと母は片付けが苦手だったことも重なり、すぐにゴミ屋敷になってしまったという。それから15年間、この状態が続いている。
施設の職員に息子が出したSOS
施設の職員が異変に気付いたのは3年前だった。男性が一時的に実家に帰り、施設に戻ってくると、体に虫に噛まれたような跡がたくさん付いていたのだ。男性に「この跡はどうしたのか」と聞いても、毎回うやむやにされてしまう。
しかし、男性が就労支援を終え、一般企業への就職が決まったことを機に、本人から「実家を片付けたい。助けてほしい」と相談を受けた。施設の職員の男性がそのときのことを振り返る。
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