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損保大手4社「覆面座談会」で見えた残酷な実態 「不正請求は日常茶飯事」「在庫車を強制購入」

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 8時0分

──カルテル問題について。東急グループ向けの火災保険などでカルテル行為が発覚したとき、社内はどのような反応でしたか。

Fさん 「え、ダメだったの?」みたいな反応をしている人が、大勢いましたよ(笑)。業界慣行だったといわれているとおり、多くの営業の人たちは企業代理店とかを通じて、提示する保険料の水準を調整するのは問題ない、当然ぐらいの認識だったようです。

Gさん 営業部門から、「今日、監査が入った」とか「メールを過去何年分もさかのぼってチェックされた」とか「コンプラ(イアンス)部門の聞き取りが入った」とか「デジタルフォレンジックの調査が入った」といった話を聞き、かなり大変そうでした。

共保について話を聞くと、「日常的に他社と連絡を取り合っている。他社と一緒になって引き受けるので、手続き上どうしたって営業担当者同士でやり取りせざるをえない。正直、(カルテルは)当たり前のように行われてきたことだ」と、営業の人は皆言っていました。

[デジタルフォレンジック]パソコンやサーバー、携帯電話などの電子機器に残っているメールなどのデータを解析して事実関係を調査すること。

[共保]共同保険の略。単独では引き受けが難しい大企業向けの火災保険などを、リスク分散のため複数の損保で引き受ける仕組み。

Fさん 損保を「出入り業者」の1つぐらいにしか考えていない大企業は、少なくありません。損保各社の入札で、企財包の保険料をガチンコで競わせ1円でも安いところと契約しよう、というような意識も薄い。

それよりも本業(商品やサービスの販売)にどれだけ協力してくれたか、いわゆる営業協力の度合いによって、次回の保険契約の引き受けシェアを決めよう、というような姿勢で、顧客企業も傘下の代理店も接してくる。

昔はその企業の株を買い、安定株主として機能することが最もわかりやすい営業協力でした。ただ、現在は、どこの損保も政策保有株を削減する大きな流れの中にいます。

それゆえ、顧客企業の商品を買う、サービスを利用するといった営業協力で競うことに、損保営業の力点がさらに置かれるようになっていったのだと感じています。

[企財包]企業財産包括保険の略。事務所や工場など複数の施設における火災などの事故のほか、事故に伴う利益の減少などについても包括的に補償する。

[政策保有株]顧客企業との取引関係の維持・強化を目的として保有する株式。損保大手4社の政策保有株の時価合計額は6兆円超に上る。

歪んだ取引に心を病む営業担当者

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