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「ある男の転落死」裏側に潜む"夫婦の秘密と嘘" 仏映画「落下の解剖学」で描かれる人間の複雑さ

東洋経済オンライン / 2024年1月22日 13時0分

本作のメガホンをとったジュスティーヌ・トリエは、2013年の『ソルフェリーノの戦い』で監督デビューを果たし、2016年の『ヴィクトリア』、2019年の『愛欲のセラピー』などで高い評価を受けた注目の映画監督。

4本目となる本作でついにカンヌ映画祭のパルムドールを獲得することとなったが、女性監督でパルムドールに輝いたのは『ピアノ・レッスン』(1993年)のジェーン・カンピオン監督、『TITANEチタン』(2021年)のジュリア・デュクルノー監督に次いで3人目の快挙となる。

そして主人公のサンドラを演じるのは2006年の『レクイエム〜ミカエラの肖像』で第56回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀主演女優賞)を獲得し、2016年の『ありがとう、トニ・エルドマン』で第29回ヨーロッパ映画賞女優賞を獲得するなど、国内外の映画賞を数多く受賞する、ドイツを代表する女優ザンドラ・ヒュラー。

特に昨年のカンヌ映画賞では本作だけでなく、ジョナサン・グレイザー監督の『The Zone of Interest(原題)』がパルムドールに次ぐグランプリに輝くなど、彼女の出演作2本がカンヌを沸かせたことも話題となった。

本作の脚本は、トリエ監督の公私にわたるパートナーである監督・脚本家・俳優のアルチュール・アラリが、トリエ監督と共同で担当。

「ある夫婦の関係が崩壊していくさまを表現したいと思ったのがはじまり。夫婦の身体的、精神的転落を緻密に描くことによって、ふたりの愛の衰えが浮き彫りになっていくという発想から出発した」と企画のはじまりを明かしたトリエ監督は、前作『愛欲のセラピー』でタッグを組んだザンドラ・ヒュラーともう一度仕事をしたいという思いから、「本作の脚本はザンドラを念頭に書いた」と振り返る。

「主人公はリベラルな女性。そのセクシャリティやキャリア、母親としてのあり方ゆえに他人から白い目で見られている。わたしはザンドラなら単なるメッセージのレベルにとどまらず、この役柄に複雑さと深みをもたらしてくれると思っていた。だが撮影を開始してすぐに、ザンドラの信念と独創性に圧倒された」と全幅の信頼を寄せている。

そしてそのラブコールを受けたザンドラも「脚本を読んで本当に興奮したし、特にキャラクターが魅力的だった」と語っていた。

人間の複雑さを描いた裁判劇

何より本作で特筆されるのは、“言語”が重要な位置を占めているということ。本作は裁判劇となるが、事件の詳細を描き出すよりも、人間のエゴ、嫉妬、嘘、隠された思いなど、人間の複雑さを描き出すことにより重きが置かれている。

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