「20代社員に助言請う」外資経営者、その"深い"意図 若手に学ぶ「逆転の発想」で新たな視点を得る
東洋経済オンライン / 2024年1月23日 19時0分
例えば数年前「June」というスマートオーブンが話題になったことがあります。これは1500ドルもする高級オーブンなのですが、カメラが内蔵されていて、画像認識で材料や料理、さらには焼き具合も自動認識して調整してくれるというものでした。また、カメラ機能の副産物として、食材が焼けていくところを動画として残し、SNSでシェアすることもできます。
それを見たある日本の電気メーカーの若手社員は、SNSをはじめさまざまなところで「調理ビデオ」が流行りはじめていたことにも着目していたため、「人は料理の完成形だけではなくその過程も見せたいんじゃないか?」と考え、さらには「どうすれば自分の調理過程を他人と共有したくなるようなカタチで残すことができる家電をつくれるだろうか?」ということを考えていたのです。
ところが、彼がこれを社内で共有することはありませんでした。その大きな理由は「食べ物や料理をする過程をオンラインで共有したい」という欲求について共感してもらうことはおろか、「写真や動画をオンラインで共有したい」という欲求すら“上”の人たちに理解してもらうことができないので、言うだけ無駄、ということでした。
残念ながら似たような状況は多くの職場で起きているのではないでしょうか。
IDEOのシニアパートナーで創業者の弟でもあるトム・ケリーの言葉で私が最も感銘を受けたのが、
「マネジメントの最も重要な仕事の一つは社内の最高の考えや気づきがスムーズに組織を流れ、自分たちのところまで流れてくる仕組みをつくることだ」
というものです。その仕組みとしておすすめしたいのが、「リバースメンター」というものです。
経営者が若手に学ぶ「リバースメンター」
メンターや職場先輩制度はふつう、若手社員に対してベテラン社員がメンターとして付きますが、その逆、つまり、ベテラン社員に対して若手社員がメンターとして付くのです。
IDEOの経営陣はリバースメンターを付けています。
例えば、CEOのメンターは20代の社員であったりと、経営陣に対して、人生もキャリアも浅いけれど、自身とは違うものを面白がったり、日常的に違う行動をとっている若いメンターが付くことで、経営陣は若者の思考や行動を目の当たりにできます。そして、そこから学ぶことが非常に多いのです。重要なのはそのギャップを認識することであり、そこにふたをしてしまうのではなく補完することです。
これは明日にでも実施可能ですし、リスクも低い試みなのでおすすめなのですが、そこまでは自分の会社ではできないという人は、まずはお子さんや親戚の子に「何かを教えてもらう」体験をしてみるとよいでしょう。そこで得られるインスピレーションは計り知れません。
ちなみにリバースメンターは、IDEOの専売特許ではありません。例えばP&GのCEOを務めたA・G・ラフリーも若いリバースメンターを付けていました。自分の常識は若い人たちの常識とは異なるという認識のもと、打てる手を打っていたのです。
「問い続ける」だけではなく、「問いに共感する」ためには、こうした工夫も必要です。
野々村 健一:デザイン・コンサルタント
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