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「こども誰でも通園制度」理想実現までの高い壁 利用枠「月10時間以上」だが現場は保育士不足

東洋経済オンライン / 2024年1月23日 7時0分

そのため、本格実施されれば、全自治体で実施しなければならない制度になる。現在、一時預かり事業は2割弱の自治体で未実施となっているので、これまで一時預かり事業がなかった自治体では、プラスアルファの子育て支援になるはずだ。

とはいうものの、現実はなかなか理論どおりにはならない。

認可の保育園や認定こども園などの通常の保育も、給付制度として行われているといえば、わかりやすいかもしれない。

給付制度は、本来は利用資格がある全員が利用できることを想定しているが、実際には待機児童があふれかえっていたし、現在でも都市部では希望しても入園できない状況が多数発生している。

つまり、給付制度であっても、需要に対して供給が足りない場合には、利用できる資格はあっても利用できないということだ。もちろん、実施する保育施設等が近くにない場合も利用できない。

「保育を利用していないすべての生後6カ月から3歳未満の子どもに……」という謳い文句がどこまで実現するかは未知数だ。

「月10時間以上」利用できる?

利用時間については当初「月10時間」の上限を設ける予定だったが、1月になって2026年度からの本格実施では「月10時間以上で内閣府令で定める時間」とすることが発表された。

「月10時間は短すぎる」という感想が相次いだことを受けて、とりあえず利用時間を保留したようだ。試行事業をやってみて正式決定されるので、「月10時間」に決定される可能性もある。

「月10時間」というと、月に2回・半日ずつ預けると使い切ってしまう時間だ。子どもにとっても中途半端になる可能性がある。あまり短時間の利用では、子どもが環境に慣れたり保育者と信頼関係を築いたりすることが難しくなるからだ。

制度を検討した検討会の報告では、一番の狙いとして、子どもにとっての次のようなメリットが挙げられていた(要約)。

・子どもの育ちに適した人的・物的・空間的環境があり、専門職がいる場で、家庭とは異なる経験や、家族以外の人と関わる機会が得られる。


・子どもにとって年齢の近い子どもとの関わりは、社会情緒的な発達への効果的な影響がある。

・保護者が専門職から子どものよいところや成長を伝えられたり、子どもをともに見守る人がいると感じたりすることで、子どもへの接し方が変わったり新たな気づきを得たりして、子どもとの関係性や子どもの育ちにもよい影響がある。

この制度が、単なる保護者の負担軽減ではなく、「すべての子どもの育ちを応援し、良質な成育環境を整備する」ことを狙いとして掲げているのは、一時預かり事業との大きな違いであり、「子どもを真ん中に」という理念にかなうものだと思う。

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